東日本大震災の復興支援に関する宣言
東日本大震災発生以来,被災地においては,被災者,被災した自治体,自衛隊,警察,消防及びボランティアなどが中心となり,懸命な被災者の救助や復旧活動が行われてきた。しかし,大震災の被害があまりに重大でありかつ広域に及んでいることや,被災自治体自体が機能不全に陥ったことなどにより,被災者の救助や復旧活動には大きな遅れが生じている。そのため,被災地では,大震災から2か月余り経過したにもかかわらず,従前から指摘されてきた避難所の衛生問題や避難所生活者のプライバシーの問題が解消したとは言い難い上,避難所生活の長期化がもたらす心身の健康問題,自宅避難者も含めた避難生活者への食糧支援不足の問題,山積したがれきや汚泥がもたらす疾病の問題など,復旧の遅延と長期化による問題が深刻化しており,被災者の人権が脅かされている。そして,福島第一原子力発電所の原子炉事故の発生が,今回の大震災の被害を複合的で重大なものにしていることも看過できない。
このような状況の中でも,国や自治体では復興に向けて動き出している。被災者の人権保障は,救助・復旧過程にとどまらず,復興の過程においても実現されなければならないことは言うまでもない。特に,今後進展するであろう復興に際しては,被災者一人一人が地域とともに再び息づくという「人間の復興」が目指されなければならず,そのためには被災者の視点に立った支援活動が求められる。
被災者一人一人が抱える具体的な問題に目を向けると,当会がこれまで実施してきた法律相談において,住宅の復旧に関する相談,住宅ローンや事業用ローンなどの負債に関する相談,就業先が喪失したことによる雇用に関する相談,地域の産業と雇用を支えてきた事業主からの事業継続に関する相談など,被災者や被災地の復旧・復興に直接関わる相談が寄せられてきている。被災者が抱える法律問題は,大震災後2か月を経過した現在ますます深刻なものとなってきており,弁護士による法的支援の必要性は,今後,一層高まるものと考えられる。
当会は,3月15日付け会長声明において復興支援に全力を尽くす旨宣言し,4月14日付け第1次緊急提言では,被災者に寄り添いその復旧と復興を支援することを提言したが,被災者の置かれた上記現状をふまえると,今後も,基本的人権の擁護と社会正義の実現を責務とする団体として,また,被災地の弁護士会として,被災者の人権を擁護しその復興を支援するための活動を果たしていくことが求められる。具体的には,
(一)法律相談等の法的支援の継続と充実を実現すること
(二)当会の東日本大震災紛争解決支援センター(震災ADR)を最大限活用して紛争解決に貢献すること
(三)関係各機関や他分野の専門家と連携して充実した支援や施策を実現させること
(四)関係各機関に対し各種提言や意見表明を行うことにより被災者支援を充実させること
などの各課題に積極的に取り組み,これらの取り組みを通じて被災者の復旧と復興を支える役割を果たすことが強く求められている。
ここに,当会は,これらの各課題への取り組みが被災者支援にとって極めて重要な課題であることを確認するとともに,被災者と被災地の復旧と復興を支援し,もって,基本的人権を擁護し社会正義の実現を図るという弁護士本来の責務を果たすべく,会の力を結集してこれらの課題に全力で取り組むことを宣言する。
2011(平成23)年5月20日
仙台弁護士会
会 長 森 山 博