オスプレイの普天間基地配備に反対する会長声明
2012年10月1日、沖縄県宜野湾市の普天間飛行場に、垂直離着陸輸送機MV‐22オスプレイが配備され以来訓練飛行が続けられている。
オスプレイについては、オートローテーション機能(エンジン停止時に、機体が落下する際に生じる気流を利用して安全に着陸する機能)の欠陥や、回転翼機モードから固定翼機モードへの切り替え時の不安定さ、風の影響を受けやすい操縦性等、多くの構造的欠陥のあることが専門家から指摘されている。また、オスプレイは開発段階から事故を繰り返しており、2006年量産体制に入った後も事故が絶えない(2006年から2011年まで大小58件の事故発生が報道されている)。2012年4月にはモロッコで訓練中に墜落して2名が死亡し、同年6月にもフロリダ州で訓練中に墜落して5名が負傷し、同年7月には米ノースカロライナ州で民間空港に、同年9月には同州で市街地に各々緊急着陸するなど、その安全性には大きな疑念がある。
これらの墜落事故等について、米海兵隊は人為的ミスが原因だと強調し、日本政府もこれを追認し、同年9月「安全宣言」を出している。しかし、そもそも、人為的ミスだから安全であるとの論理が成り立たない。現実にこれだけの事故が起きている以上、オスプレイの危険性は明らかである。
加えて、オスプレイが配備された普天間基地は、宜野湾市の市街地のただ中に位置し、「世界一危険な飛行場」と言われ(2010年7月29日福岡高裁那覇支部判決参照)、ひとたび墜落事故が起きれば大惨事に至ることは明白である。
また、オスプレイは今後、沖縄県内だけでなく、宮城県上空を含む東北六県を通過する2ルートを始め、20県にまたがる6ルート(山陰地方を飛行する第7のルートもあるとされる)など、全国各地で低空飛行訓練を行うことが予定されている。オスプレイの飛行による墜落や騒音、回転翼による強い下降気流等による環境破壊の危険は、沖縄県にとどまらず全国に広がっている。
このように、オスプレイを配備したこと及び今後低空飛行訓練が予定されていることは国民の生命・身体の安全に対する重大な脅威である。
また、沖縄県をはじめとする多くの地方自治体がオスプレイ配備に反対する意見書や決議案を可決する等、オスプレイ配備に反対する国民の意思が多数示されている。
全国各地における不安の高まりを受け、日米両政府は9月、オスプレイの飛行ルールを合意したものの、①学校を含む人口密集地の上空を極力避け飛行する、②運用上必要な場合を除き、ヘリモード飛行は米軍基地内に限る、などの合意は早々に破られている。又、1996年には午後10時から午前7時までの離着陸を必要最小限度にするとの騒音協定を結んでいるが、その実効性はなく、米海兵隊の環境審査報告書によれば、オスプレイが配備されることによって普天間基地における夜間、早朝の離着陸の回数が著しく増大し、基地周辺の住民の生活を圧迫している。
オスプレイ配備の強行と飛行訓練の実施は、日本国民の生命、身体、財産に対する重大な侵害のおそれを生じさせるものであり、人格権(13条)、財産権(29条)、平和のうちに生存する権利(前文、9条、13条など)等を保障する日本国憲法の精神に反し、到底看過できない。
よって、当会は、アメリカ政府に対し、オスプレイの普天間基地への配備を撤回し、全ルートでの低空飛行訓練を中止するよう求めるとともに、日本政府に対し、オスプレイの普天間基地配備と全ルートにおける低空飛行訓練の計画を撤回するよう米国政府と交渉するよう求める。
2013(平成25)年1月10日
仙台弁護士会
会長 髙 橋 春 男