1 平成23年3月11日に発生した東日本大震災により、全国で約8700棟のマンションが被害を被っており、東北6県では約1300棟のマンションが被害を被っている。
現行法上、震災等により被害を被ったマンションの復旧については、「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法」(以下、「被災マンション法」という)が存し、政令で定める災害により区分所有建物が全部滅失した場合、敷地共有者の議決権の5分の4以上の多数決でその敷地に建物を再建することができることを定めている。他方で、現行の被災マンション法は、建物の取壊しや取壊し後の敷地売却等の規定を設けておらず、そのため、災害により被災し、大規模な補強・補修を要するマンションの区分所有者が、補強・補修に要する費用を捻出できない等の事情でマンションの取壊しを希望した場合は、民法第251条により区分所有者全員の同意が必要となる。
しかし、常に区分所有者全員の合意がなければ建物の取壊し・敷地売却等ができないとすると、一人でも取壊し等に反対する区分所有者がいる場合には、建物の取壊し・敷地売却等はできない。その結果、重大な被害を受けた区分所有建物が長期間放置されることになりかねず、ひいては周囲に危険すら及ぼしかねないという問題が生ずることが以前から指摘されていた。
今般、こうした指摘等を踏まえ、区分所有者及び議決権の5分の4以上の多数決等を要件として、取壊し決議を新設し、また、建物敷地売却決議や建物取壊し後の敷地売却決議等を新設する被災マンション法改正法案が国会に上程され、既に衆議院本会議にて可決され、現在、参議院で審議されている。もっとも、同改正法が成立しても、前記政令による災害指定などしかるべき措置がないと、当然には東日本大震災には適用されず、この点は流動的とも伝えられている。
2 しかしながら、東日本大震災により被災したマンションのうち、仙台市内で判明している取壊し事例は5棟、区分所有者全員の同意を得られない等の事情で手続がとん挫している被災マンションが少なくとも3棟存在することが判明している。仮に、東日本大震災が被災マンション法改正法第2条第1項の災害として政令指定されないとなると、これらのマンションの取壊し・敷地売却等は長期間中断したままとなり、真の意味での復旧・復興が進まないといった由々しき事態が放置されることとなる。
3 以上より、仙台弁護士会は、被災地弁護士会として、東日本大震災を被災マンション法改正法の災害として政令指定するなど、しかるべき措置がとられることにより、東日本大震災に同法が適用されることを強く求めるものである。
2013年(平成25年)6月14日
仙 台 弁 護 士 会
会長 内 田 正 之