犯罪被害者の刑事参加手続に反対する会長声明
当会は,本年2月24日の定期総会において,被害者参加人制度及び付帯私訴制度は現行刑事裁判制度の根幹を揺るがすものであり,その導入は断じて容認することができないので,政府に対し,このような制度を含む刑事訴訟法の改正案を国会に提出しないように求めるとともに,国会にも上記改正案を成立させないよう強く求めることを決議した。
しかし,衆議院は,本年6月1日,被害者の刑事手続参加制度の新設を含む「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」を可決し,参議院に送付した。
衆議院での可決に先立ち,本年5月29日の衆議院法務委員会における参考人質疑においても,被害者の遺族の立場にある二人の参考人が,この法案に対して賛成と反対という異なる意見を陳述し,研究者である二人の参考人も大きく異なる見解を述べている。このように,国民の中で意見が分かれているにもかかわらず,衆議院法務委員会においては,このように,十分な審議が尽くされず,法案が採決されるに至ったものである。
本法案の参加制度においては,犯罪被害者等は,検察官とは別個の当事者の立場で,証人や被告人に尋問したり,求刑意見を述べたりすることができ,そこに報復感情が影響してくることは否定できない。また,被告人・弁護人は検察官だけでなく,犯罪被害者等とも対峙しなければならず,被告人の防御権の行使にとって負担が加重となることは避け難い。
以上のように,本法案は刑事裁判の現場に多大な悪影響を及ぼすことが明らかであることから,参議院に対し,上記改正案を成立させないよう,改めて強く求める次第である。
2007(平成19)年6月13日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 角 山 正