2013年(平成25年)9月10日,平成25年司法試験合格者が発表された。本年の合格者数は2049人であり,前年同様2000人を超え,政府として,司法試験合格者数を減員させるという政策はとらなかった。
合格者数2000人程度の現状においても,訴訟は増加しておらず,企業内弁護士等の需要も増えていない。司法修習生の就職難は年々悪化しており,本年においても,一括登録日における弁護士未登録者数が前年(平成24年12月12日時点で546名)以上になることが見込まれる。
多大な費用・時間を費やして司法試験に合格しても,合格後の就職が困難であるという状況では,法曹としての活躍が見込まれる意欲ある有為な人材が法曹という進路を敬遠し,他業種を志す結果を招来することが懸念される。現に,法科大学院適性試験の受験者数は激減しており,定員割れの法科大学院も多く出ている。
当会は,2013年(平成25年)2月23日,定期総会において「法曹の質を維持するために司法試験合格者数の減員を求める決議」をした。
法曹には,実務に就いてからの,具体的な事件処理を通したOJTが必要不可欠である。当会の上記決議は,司法試験合格者にOJTの機会を確保するためにも,司法試験合格者数は,現実的な法的需要に見合った人員(当面1500人程度)に減員させるべきであるとするものである。
しかし,本年の司法試験においては,約2000人という合格者数が維持された。いかに大量の人員を司法試験に合格させたとしても,それだけで司法に対する需要が増えるわけではないし,市民の需要に充分に応えうる法曹が輩出されるわけでもない。かえって,経済的・社会的基盤を持たない多くの司法修習生が,就職先を確保することができず,十分なOJTを積むこともなく独立することを強いられ,また法曹資格を得ておきながら法曹以外への進路変更を余儀なくされるだけである。特に,法曹以外への進路変更については,法曹養成のために費やされた多大な費用及び労力が活かされない可能性が高く,社会経済的な損失は極めて大きい。
政府としては,現在の司法試験合格者数が法的需要に見合っていないという現実を踏まえて司法試験合格者数を適正規模に減員させるべきであったのであり,本年の司法試験合格者数を2000人程度として,ほぼ前年同様としたことは政策判断を誤ったものというほかない。
よって,法曹人口の在り方については,今後,政府の設置した法曹養成制度改革推進会議等において鋭意検討されるとしても,まずは現状の法曹人口が法的需要と無関係に拡大していくことを防ぐために,平成26年司法試験においては司法試験合格者数を適正な規模(当面1500人程度)にまで減員させることを求めるものである。
2013年(平成25年)10月18日
仙 台 弁 護 士 会
会長 内 田 正 之