政府は、2014年3月11日、労働者派遣法の一部を改正する法律案(以下「改正案」という。)を国会に提出することを閣議決定した。 改正案の柱は、従来の専門26業務による区分規制を廃止したうえで、①派遣元で無期雇用されている派遣労働者(無期雇用派遣)については、業務にかかわらず派遣期間の制限を行わないこと、②派遣元で有期雇用されている派遣労働者(有期雇用派遣)については、業務単位ではなく個人単位で同一の派遣先への派遣期間を上限3年とすることである。 当会は、これまで再三にわたって、労働者派遣を仮に認めるとしても、真に専門的な業種に限るべきであること、労働者派遣を臨時的一時的なものとする常用代替禁止の趣旨を明確化することなど、真に労働者保護に資する労働者派遣法の抜本的改正を求めてきた。 しかるに、上記改正がなされれば、派遣先企業は、専門業種に限らず恒常的に存在する業務についても永続的に派遣労働者を利用することが可能となる。 現時点では、派遣労働者に対して直接雇用者との均等待遇を保障する策は存在せず、その労働条件は、直接雇用者に比べて劣位に置かれているのが実情である。このような状況の下で、無期雇用派遣であれば専門的業務以外でも無期限に派遣労働者を受け入れることを可能とする改正がなされれば、直接雇用者が派遣労働者に置き換えられていくことが容易に想定され、常用代替防止の理念が没却されることになる。 また、有期雇用派遣についても、派遣労働者は派遣期間の上限を超えると雇用を失うこととなる一方で、派遣先は派遣労働者を替えれば永続的に派遣労働をさせることが可能となり、派遣労働の固定化、拡大化につながる。一方、改正案では、常用代替防止のため、派遣労働者交替により派遣の継続的受け入れが上限を超す場合に、派遣先における労働組合もしくは過半数労働者代表からの意見聴取制度を設けている。しかし、派遣先がかかる意見聴取の結果に従う義務はなく、常用代替防止の措置としてどれほどの効果をもつか甚だ疑問である。また、派遣労働者の雇用安定措置として、派遣元は、派遣先に対する直接雇用申入や派遣元での無期雇用化等を講ずるものとされている。しかし、上記措置には私法的効力が付与されていない以上、いずれも実効性はなく、派遣労働者の雇用の安定を図ることはできない。 以上述べてきたように、上記改正案は、派遣労働の永続化及び拡大を促進するものであって、労働者派遣が一時的・臨時的な雇用であり常用代替を防止するという労働者派遣法の原則的理念を放棄するものであり、派遣労働者の雇用の安定の見地からも不十分であって到底許容できない。 よって、当会は、上記改正に強く反対するとともに、これまでも主張してきたように、常用代替を防止し、真に労働者保護に資する労働者派遣法の抜本改正を行うよう求める。
2014年(平成26年)3月13日
仙 台 弁 護 士 会
会長 内 田 正 之