多重債務問題解決のために出資法の上限金利引き下げ等を求める決議
2007年1月を目途に行うとされている貸金業制度、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下、出資法という)の上限金利の見直しのため、本年中に法案が国会に上程される見通しとなっている。貸金業界は、この機に、みなし弁済規定の適用要件の緩和と、出資法の上限金利の引き上げ(2000年6月以前の年40.004%)を実現すべく政界に強い働きかけを行っており、さらに米政府も、日本に対する年次改革要望書の中で、グレーゾーンの廃止(金利を出資法の上限金利に一本化すること)を求めており、このままでは立法による金利の引き上げが断行されかねない危険な情勢に直面していた。
このような中、最高裁判所(以下、最高裁という)は、本年1月13日、19日、24日と、貸金業の規制等に関する法律(以下、貸金業規制法という)第43条(みなし弁済規定)を厳格解釈し、その適用を否定する画期的な判断を下した。最高裁は、2004年2月、2005年12月と、同趣旨の判断を立て続け立て続けに行っており、これら一連の判決によって利息制限法違反の高金利を容認しないという司法の考え方が示されたと言って過言ではない。
このような司法判断は、近年ますます深刻化する多重債務問題を背景としている。個人破産申立件数は2002年〜2004年まで毎年20万人を超え、やや減少傾向が見られた昨年でも約19万人余、過去5年間の累計は約100万人に上り、潜在的な破産予備軍も150万〜200万人と言われている。さらに、2004年の経済苦や生活苦による自殺者が約8000人にも達し、路上生活者に陥った原因の大半が多重債務(返済不能による取り立ての回避)であったり、離婚・児童虐待等の背景にも多重債務問題があることが指摘され、この問題の解決には、社会全体としての取り組みが必要であることが認識されつつある。そして、多重債務者の増加が、貸金業者の利息制限法所定の制限金利を大きく上回る年利25〜29.2%の高金利と、無人契約機や大量のテレビCMなどにより借金に対する抵抗感を失わせ、借り手の支払能力を精査せず行う過剰融資に原因していることは明らかである。
日本弁護士連合会、東北弁護士会連合会及び当会は、これまでに多くの決議や意見書等を通じて、多重債務問題解決のために出資法の上限金利を利息制限法まで引き下げることやみなし弁済規定の撤廃等を繰り返し求めてきた。被害者救済に向けてようやくなされた司法の英断が、立法によって覆されることがあってはならない。
よって、当会は、改めて、多重債務問題対策に全力を傾けることを宣言するとともに、国に対し、
(1)刑罰金利である出資法5条の上限金利を、利息制限法1条の制限金利まで引 き下げること
(2)貸金業規制法43条(みなし弁済規定)を廃止すること を強く求めるものである。
以上のとおり、決議する。
2006年(平成18年)2月25日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 松 坂 英 明