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商品先物取引における不招請勧誘禁止緩和に強く反対する会長声明

2014年05月02日

1 経済産業省及び農林水産省は、2014(平成26)年4月5日、商品先物取引法施行規則の改正案(以下「改正案」という)を公表した。改正案は、同規則第102条の2を改正し、現行規則では当該商品先物取引業者と継続的取引関係にあったハイリスク取引等の経験者に対する勧誘を不招請勧誘(顧客の要請によらない訪問・電話勧誘)禁止の適用除外としていたものを、他社と継続的取引関係にあったハイリスク取引等の経験者に対する勧誘も同様に不招請勧誘禁止の適用除外とすると共に、熟慮期間等を設定した契約の勧誘(顧客が70歳未満であること、基本契約から7日間を経過し、かつ、取引金額が証拠金の額を上回るおそれのあること等についての顧客の理解度を確認した場合に限る)を不招請勧誘禁止の適用除外規定に盛り込むものである。

2 しかしながら、商品先物取引における不招請勧誘規制は、当会の2013(平成25)年12月13日付け商品先物取引について不招請勧誘禁止規制撤廃に反対する会長声明で指摘したとおり、同取引による長年の深刻な被害実態とその原因分析を踏まえ、ようやく2009(平成21)年の商品取引所法(現商品先物取引法)改正で不招請勧誘禁止規定が導入された経緯がある。また、その改正の際には、「商品先物取引に関する契約の締結の勧誘を要請していない顧客に対し、一方的に訪問し、又は電話をかけて勧誘することを意味する『不招請勧誘』の禁止については、当面、一般個人を相手方とする全ての店頭取引及び初期の投資以上の損失が発生する可能性のある取引所取引を政令指定の対象とすること。」、「さらに、施行後1年以内を目処に、規制の効果及び被害の実態等に照らして政令指定の対象等を見直すものとし、必要に応じて、時機を失することなく一般個人を相手方とする取引全てに対象範囲を拡大すること。」との附帯決議がされている。不招請勧誘禁止規定が導入されて以後、商品先物取引に関する相談・被害数は著しく減少しており、不招請勧誘の禁止が被害を防止する極めて有効な方策であることが明らかになっている。

3 今回の改正案では、他社との間でハイリスク取引等の継続的経験があった者に対する勧誘も認めるものであるが、取引経験につき客観的な裏付けがある自社取引顧客と異なり、そのような客観的な裏付けがない者に対する勧誘をも許容することは、禁止行為の境界を曖昧にするものであり、「委託者等の保護に欠け、又は取引の公正を害するおそれのない行為」(商品先物取引法第214条第9号括弧書き)とは到底いえないものである。また、熟慮期間を設けた契約は、かつての海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律に類似規定が設けられていたが、顧客保護のために全く機能しなかった現実があることを考えると、70歳未満の個人顧客に対する商品先物取引の不招請勧誘を全面的に解禁するに等しい結果につながるものと言わざるを得ない。

それにもかかわらず、改正案のように規制緩和を行うことは、法律が個人顧客に対する無差別な訪問・電話勧誘を禁止した趣旨を没却し、透明かつ公正な市場を育成し、委託者保護を図るべき監督官庁の立場と相容れないものである。また、改正案は、不招請勧誘禁止の適用除外の指定につき、「委託者等の保護に欠け、又は取引の公正を害するおそれのない行為として主務省令で定める行為を除く」とする法律の委任の範囲を超えて、規則により法律の規定を骨抜きにするもので許されるものではない。

不招請勧誘禁止については、内閣府第137回消費者委員会(2013(平成25)年11月26日)においても、金融庁等から「法令及び業界の自主規制」「不招請勧誘禁止以外の代替措置」などにより被害を防止できる旨の発言がなされ、緩和の方向性が示されたのに対し、全国から規制撤廃への強い反対意見が出され、自主規制や代替手段での対策の不十分さや規制撤廃反対の社会的意見が既に明らかとなった。今回の改正案は、かかる経緯を十分に知りながら、国会での検討を避けるがごとく規則レベルでその緩和を図ろうとするものであり、断じて許されない。

4 したがって、消費者保護の観点から、商品先物取引について不招請勧誘禁止規制は維持されるべきであり、これを緩和する改正案に対し、強く反対する。

 

2014年(平成26年)5月2日

                                        仙 台 弁 護 士 会

                                          会長  齋 藤 拓 生

 

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