本日,日本国憲法が施行されてから67年目の憲法記念日を迎えた。日本国憲法は,近代立憲主義に基づき,国民主権及び基本的人権の尊重を基本原理とするとともに,第二次世界大戦の痛切な反省を踏まえ,前文で平和的生存権を確認し,第9条で戦争放棄,戦力不保持及び交戦権否認を定めるなど徹底した恒久平和主義を基本原理として採用し,戦後日本の平和国家としての発展を支えてきた。
ところが,昨年来,政府は,憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認する動きを急速に進めている。いわゆる安保法制懇は本年5月中旬にもこれを容認すべきとする報告書をまとめ,政府もこれを容認する閣議決定をする予定であると報道されている。
自国が攻撃されていないにもかかわらず実力を行使することを正当化する集団的自衛権は,その本質は他国防衛にほかならず自衛権とは全く別物であって,これを認めることは,他国間の戦争に日本が軍事的に関与する可能性を著しく増大させ,平和国家としての国のあり方を根本から変えることになる。
政府は,過去数十年にわたって,日本国民の平和的生存権や,憲法第13条が生命等に対する国民の権利を国政上尊重すべきとしている趣旨を根拠に,外部からの武力攻撃によって国民の生命等が危険にさらされるような場合,すなわち我が国に対して武力攻撃が加えられた場合には,これを排除するために必要最小限度の範囲で実力を行使すること(個別的自衛権の行使)は憲法に違反しないと説明する一方,集団的自衛権については,国民の生命等が危険に直面している状況下で実力を行使する場合とは異なり,憲法の中に我が国として実力を行使することが許されるとする根拠を見いだし難いとして,その行使は憲法上許されないとの立場を堅持してきた。
集団的自衛権の行使を容認しようとする今般の政府の動きは,恒久平和主義に反するとともに,憲法の基本原理に関わる解釈の重大な変更を一内閣の判断で行おうとする点で,憲法により国家権力を制約するという立憲主義に反する。また,閣議決定により実質的に憲法改正を行うものとして,厳格な憲法改正手続を定めた憲法第96条を潜脱するものである。
当会は,2013年(平成25年)10月18日付け会長声明において,憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に強く反対する旨表明したが,施行から67年目の憲法記念日を迎えるに当たり,日本国憲法の立憲主義の意義を再確認するとともに,恒久平和主義という基本原理を解釈変更によって実質的に改変し,集団的自衛権の行使を容認しようとする動きに対し,改めて強く反対する。
2014年(平成26年)5月3日
仙 台 弁 護 士 会
会長 齋 藤 拓 生