債権管理回収業に関する特別措置法の改正に反対する決議
2004年(平成16年)8月、全国サービサー協会(以下「協会」という。)から、「債権管理回収業に関する特別措置法改正に関する要望書」(以下「要望書」という。)が法務大臣宛に提出され、この度の通常国会において、この要望書の内容を盛り込んだ同法(以下「サービサー法」という。)の改正法案が、議員立法として上程されることが予定されている。
協会からこのような要望書が出されたのは、同法の施行から5年(同法付則で定められた見直し検討のための経過期間)以上が経過した今日、協会が、債権管理回収会社(以下「サービサー」という。)の取り扱い業務の拡大やその業務遂行の利便性実現を目指して行動を起こしたことによるものである。そのため、要望書の内容は、(1)サービサーが取り扱い可能とされる特定金銭債権の範囲の拡大、(2)兼業の承認制の緩和(承認制からから届出制へ)、(3)「債権回収」の商号強制の廃止、(4)利息制限法超過利息の請求の認容、(5)身分証明書携帯と債権譲渡要件の緩和、(6)戸籍、住民票、外国人登録原簿に対する調査権限の付与、(7)競売での現況調査及び評価の特例のように、サービサーに対する規制を大幅に緩和することを求めるものとなっている。
しかし、もともと債権回収を業とすることは、弁護士以外には禁じられており(弁護士法72条)、債権回収のために他人の権利を譲り受けることは許されないのが原則である(同法73条)。このような規定は、債権回収等の法律問題に適正に対処するためには、専門知識と経験、さらには厳格な倫理規制に服している弁護士でなくてはならないという趣旨に基づいている。これに対し、サービサー法は、「(不良債権と化した)特定金銭債権の処理が喫緊の課題となっている状況に鑑み」「弁護士法の特例」(サービサー法第1条)として成立したものである。このように、その立法目的は、特定金銭債権の処理に限定されるべきものであり、取り扱い可能な債権の範囲を広げることは、当初の立法目的を大きく逸脱するとともに、上記のような弁護士法の趣旨に反することは明らかである。実際上も、金銭債権の中には、債務者からその不存在が主張されたり相殺や時効の抗弁が主張されるなど紛争性を帯びるものも数多く存在するところ、こうした紛争性のある権利を、法的な専門知識及び倫理規制が必ずしも担保されていないサービサーの業務の対象と認めるときは、紛争の適正な解決がないがしろにされるおそれは否定できない。
さらに、それ以外のサービサーの業務遂行の規制緩和に関する改正条項についても、これらが可決されるときは、利息制限法を超過する利息の支払を求めることによる債務者の経済的更生の阻害や、債務者とされる市民の個人情報(本籍・住所地など)を収集することによるプライバシーの侵害など、サービサーの業務が、市民の生活に対し深刻な脅威を及ぼす結果となることは明らかである。
このように、今国会に上程される予定のサービサー法改正法案は、サービサー及びその業界に利便性をもたらすことを重視する反面、その相手方である債務者に及ぶ不利益や様々な社会的弊害を全く顧みないものであって、このような法案が国会において可決されることは決して許されるべきではない。
以上の理由により、当会は、このようなサービサー法改正法案に強く反対し、今国会において同法案が上程された場合、この法案が廃案となるよう強く求めるものである。
以上、決議する。
2005年(平成17年)2月26日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 鹿 野 哲 義