司法修習生の給付制堅持を求める会長声明
財務省の財政制度等審議会が司法修習の給費制の早期廃止を提言し,司法制度改革推進本部の法曹養成検討会でも,必ずしも十分な議論を尽くさないまま、「貸与制への移行という選択肢も含めて柔軟に検討する」との取りまとめをした。
しかしながら,当会は,以下の理由により司法修習生の給費制を廃止することに強く反対する。
現行司法修習制度における給費制は,司法修習生に修習専念義務を課していることの反面としてその生活を保障し、司法修習制度と不可分一体のものとして採用された制度である。
すなわち、法曹養成制度は単なる職業人の養成ではなく、国民の権利義務、法の支配の実現にかかわるプロフェッションを養成するものであり、国及び社会にとって公共性・公益性の高い重要事項であるからこそ、司法修習生には修習専念義務を課す反面修習専念義務を尽くすための環境を確保するために給費制が取られているのである。
したがって、修習専念義務と給費制を切り離すことは出来ない。
また、修習専念義務が課される司法修習生の給費制が廃止されれば,経済的余裕のないものは法曹への道を断念せざるを得なくなる。
高額な学費を要することが予想される法科大学院制度のもとではなおさらである。
給費制の廃止により法曹への門戸が一般国民に閉ざされることは,社会の様々な分野において厚い層をなして活躍する法曹を獲得することを目指した司法制度改革の精神に反することは明らかである。
給費制に代えて貸与制が採用された場合には、貸与の主体や条件等によって修習の独立性が脅かされるおそれもあること、また、法曹のスタート時点で多額の負債をかかえることは法曹としての質の高い活動を阻害する恐れもあることなどを考えると、貸与制では給費制廃止による弊害を取り除くことは出来ない。
なお,給費制を廃止して貸与制に切り替えた上で任官者については当然に返済を免除するという議論が存在する。しかしこの議論は,実質的には任官者についてのみ給費制を維持することを意味するものであり,法曹三者の統一・公正・平等の理念に基づく司法修習を変容させ,法曹一元の理念を阻害するものであり到底容認することはできない。
将来の法曹を担う人材の育成は国の責務と言うべきものであって,このため国は司法制度改革実現のため必要な財政上の措置を講ずる義務がある(司法制度改革推進法6条)。したがって、財政上の理由により給費制を廃止し貸与制を採用することは,本末転倒の議論である。
よって,当会は,給費制廃止に強く反対し,給費制を堅持するよう求める。
平成15年10月22日
仙台弁護士会
会 長 松 尾 良 風