イラク特別措置法案に対する会長声明
2003年7月4日、与党3党の賛成により、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案(以下、「イラク特別措置法案」という)が衆議院を通過した。
イラク特別措置法案は、「戦後はじめて、自衛隊が他国領土で米英軍を主力とする多国籍軍を支援する」ことをその目的とし、自衛隊をイラクに部隊として派遣しようとするものである。
そもそも米英軍のイラク侵攻は、既に当会でも指摘しているとおり、国連憲章に反するものであり、大量破壊兵器の未発見という事態を前にして、米英が主張した正当性さえ大きく揺らいでいる。また、現在、イラクには、イラク人による統治機構は存在しておらず、米英軍が、侵攻の戦後処理としての占領行政を行っている状態である。そして、イラクにおいては、米英軍の占領に反対しての抵抗が続いており、ブッシュ大統領も認めたとおり、イラクは未だ戦闘状態にある。
このような状態にあるイラクに自衛隊が武器を携えて派遣され、戦闘継続中の米英軍のために武器・弾薬・兵員を輸送することは、「非戦闘地域での後方支援」などということはできず、米英軍の武力行使と一体化したものと評価されることは明らかである。そして、米英軍の占領行為に反対するイラク人勢力から自衛隊が攻撃される可能性も大きく、その際には、自衛隊がイラク国民に対して武力を行使する事態も、自衛隊員が死傷する事態も、現実に予想されるところである。
日本国憲法が他国領土での武力行使を禁じていることは言うまでもない。したがって、イラクにおける自衛隊の武力行使を事実上容認するイラク特別措置法案は、憲法に違反する恐れが極めて大きいものといわざるを得ない。
しかるに、衆議院において、延長国会でのわずかな審議で、憲法との適合性に疑問があり、国民の意見も大きく分かれているこの法案を、与党3党が全野党の反対を押し切って採決したことは、到底容認することができない。
当会は、イラク特別措置法案の衆議院における採決に強く抗議し、同法案に反対するものである。
2003年7月16日
仙台弁護士会
会 長 松 尾 良 風