1 現在の法曹養成制度では、司法試験の受験資格を得るためには、法科大学院を修了するか、あるいは、司法試験予備試験(以下「予備試験」と言う。)に合格することが必要である。
このうち予備試験に対しては、法科大学院を経由しない「抜け道」として機能している等の批判がなされ、法曹養成制度の在り方について検討するために政府が設置した法曹養成制度改革顧問会議において、同会議の顧問から、予備試験の受験資格についてなんらかの制限を加えるべきだという意見が出されるなどしている。
しかし、当会は、以下に述べる理由から、予備試験の受験資格を制限することは適当ではないと考える。
2 法科大学院に進学するために受験しなければならない適性試験の志願者数は、平成15年には大学入試センター実施のものが3万9350人、日弁連法務研究財団実施のものは2万0043人であったところ、平成26年度には4407人と激減し、これに伴って平成26年度の法科大学院への入学者も2272人にとどまっている。
このような法曹志願者の減少は、司法試験による選抜効果の低下等を招き、将来の法曹の質の維持に影響を及ぼすおそれがある。
これに対して予備試験の受験者数は増加が続き、平成26年に1万人を超えるまでになっており、法曹志願者の減少を食い止めている。
このような現状において予備試験の受験資格を制限すれば、法曹志願者の減少に歯止めがかからなくなり、将来の法曹の質の維持に大きな影響が生じかねない。
3 また、法曹養成制度改革顧問会議で検討された受験資格制限の案は、資力や年齢によって制限するものや、法科大学院在学者に受験資格を認めないものなどであった。
しかし、資力によって制限するという案は、資力のある有職者が受験できなくなるおそれがあり、また、資力基準の設定やその該当性の確認が困難である。年齢による制限を加える案についても、現時点で年齢制限がない試験に、あえてそのような制限を加えることの合理性が見いだしがたく、法の下の平等に反するなどの憲法上の疑義も指摘されている。法科大学院在学者に対して受験資格を認めないという案も、それによって法科大学院の受験者・入学者が増えるということにはならない。現在誰でも受験できる予備試験に制限を加えることでますます法曹志願者が減少するおそれがあり、いずれの案も妥当ではない。
4 予備試験は、法科大学院に通うことが時間的・経済的に困難な法曹志願者のために存在意義があるものである。特に、法科大学院が存在しない、あるいは通学が事実上困難な地方在住者の中には、予備試験が制限されることで、法曹への道を絶たれる者が出てくるおそれがある。現在、その意義・役割が大きいことは、受験者数が年々増加を続けていることからも明らかである。
そして、予備試験は、まだ制度が始まったばかりであり、その弊害が十分に検証されているとは言いがたく、現時点で受験資格制限を考えることは拙速である。法科大学院の入学者がその激減している現状では、複数の選択肢を存在させるべきである。
5 以上より、当会としては、予備試験の受験資格に制限を設けることには強く反対するものである。
2014年(平成26年)10月22日
仙 台 弁 護 士 会
会長 齋 藤 拓 生