本年10月14日、特定秘密の保護に関する法律(以下「秘密保護法」という。)の施行令及び運用基準等、並びに施行日を本年12月10日とすることが閣議決定された。
当会は、2013年12月13日付会長声明及び本年2月22日付総会決議により、秘密保護法について、①特定秘密の範囲が広範かつ不明確で、恣意的な秘密指定がなされるおそれがあるため、知る権利の保障や国民主権の原理にもとること、②秘密指定等の適正をチェックする独立した第三者機関が存在しないこと、③処罰範囲も広範かつ不明確であり、罪刑法定主義の観点からも重大な疑義が存し、国民やメディアにも深刻な萎縮効果をもたらすこと、④適性評価制度により国民のプライバシーや思想・良心の自由を侵害されるおそれがあること、⑤被疑者・被告人の防御権及び裁判を受ける権利を侵害しかねないこと、などを指摘し、同法は廃止しか方法がないことを訴えた。
政府は、本年7月24日、施行令(案)及び運用基準(案)等を公表し、パブリックコメントを実施し、同パブリックコメントを受けて運用基準(案)等を一部修正したが、当会が指摘した上記各問題点は、そもそも秘密保護法そのものの持つ欠陥であり、この運用基準案等及びその修正を考慮しても、上記各問題点を克服できていない。
即ち、
① 秘密保護法の別表及び運用基準を総合しても、秘密指定できる情報は極めて広範であり、恣意的な秘密指定の危険性が解消されていない。
② 政府の恣意的な秘密指定を防ぐためには、すべての特定秘密にアクセスすることができ、人事、権限、財政の面で秘密指定行政機関から完全に独立した公正な第三者機関が必要であることは国際的な常識であるが、同法が規定している独立公文書管理監等の制度にはこのような権限と独立性が欠けている。
即ち、独立公文書管理監は一名しかおらず、しかも同管理監を補佐する情報保全監察室のスタッフは少人数であるうえ、秘密指定機関へのリターンを認めないこと、すべての秘密開示のための権限を認めること、内部通報を直接受けられるようにすることなどは全く実現していない。
しかも、同管理監は、不正に運用されていると判断すれば、当該大臣に指定の解除を求めることができるが、当該大臣はこれを拒否できるとされており、実効性はない。
③ 秘密保護法には、違法・不当な秘密指定や政府の腐敗行為、原発事故など大規模な環境汚染の事実等を秘密指定してはならないことを明記すべきであるのに、このような規定がない。
④ 特定秘密を最終的に公開するための確実な法制度がなく、多くの特定秘密が市民の目に触れることなく廃棄されることとなる可能性がある。
⑤ ジャーナリストや市民を刑事罰の対象としてはならないことは、「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(ツワネ原則)にも明記されているが、それが実現されていない。
などの重大な問題を抱えたままである。
よって、当会は、国民の知る権利と民主主義を危機に陥れ、国民主権をないがしろにする秘密保護法を廃止すべきこと、同法の廃止までの間施行令及び運用基準等の施行を中止すべきであることを強く訴える。
2014年(平成26年)11月13日
仙 台 弁 護 士 会
会長 齋 藤 拓 生