有事法制3法の成立に対する会長声明
2003年6月6日、参議院本会議において、自民党・公明党・保守新党・民主党・自由党の賛成多数でいわゆる有事法制3法が可決され成立した。わが国は第二次世界大戦後58年を経て有事法制を有する国となった。
当会は、本年5月21日付け会長声明などで、「対処措置」の発動要件である「武力攻撃事態」・「武力攻撃予測事態」の定義が曖昧であること、いわゆる周辺事態法でいう「周辺事態」との関係、武力攻撃事態法と周辺事態法がどう連動するかが不明確であること、有事認定の客観性も十分に担保されていないこと、国会による事前の民主的コントロールも確保されておらず、有事において民主的な統治機構や地方自治を維持することができるのか疑問であること、民放を含むメディアが有事に政府の統制下におかれる危険性も完全には排除されていないこと等の問題点を指摘し、参議院での慎重審議と十分な国民的議論を尽くすことを強く求めてきた。
しかし、十分な国民的議論も尽くされず、上記のような重大な憲法上の問題点が何ら解消されないまま、有事法制3法が可決・成立されたことは、極めて遺憾なことといわざるを得ない。
当会は、恒久平和と基本的人権の尊重、国民主権主義という日本国憲法の基本原理を擁護し、今後とも、有事法制の有する憲法上の問題点を広く明らかにし、平和が脅かされ基本的人権が侵害されることのないよう、法制の具体化や運用を、厳しく監視してゆく所存である。
また、武力攻撃事態法を実施するため今後提出が予定されている「米軍支援法制」「国民保護法制」などの個別法案について、法律家団体として憲法の基本原理擁護の立場から、検討し提言していくものである。
憲法は、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」(前文)するとともに、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」(12条)ことを謳っている。憲法の理念や憲法が保障する基本的人権は、一人一人の市民が自らの自由と権利を保持するために努力することによってのみ守られるものである。
当会は、引き続き市民とともに、最大の人権侵害である戦争に反対し、憲法で保障された自由と権利を守るため、引き続き最大限の努力をする決意である。
2003年(平成15年)6月18日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 松 尾 良 風