出資法の上限金利引き下げ等を求める会長声明
商工ローン最大手の株式会社日栄(現ロプロ)の従業員による「目ん玉を売って支払え」等の脅迫的な取立が社会問題となったことを契機として、1999年12月の臨時国会において、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」(以下「出資法」という)第5条2項の上限金利が、年29.2パーセントに引き下げられた。その際,附則第8条で、改正法の施行後3年(2003年6月1日)を経過した時点で、同項について「資金需給の状況その他の経済・金融情勢、貸金業者の業務の実態等を勘案して検討を加え、必要な見直しを行うものとする」とされており、今正にこの見直しの時期が到来している。
現在の経済・金融情勢等を概観すると、長引く不況のもと、多重債務者は増え続け、昨年の個人の自己破産申立件数は22万件を超えて過去最高となっている。しかも、破産予備軍である多重債務者は、全国の簡易裁判所の調停件数や支払督促申立件数から推計して、約150万人から200万人に及ぶともいわれている。その上、最近は,多重債務者・自己破産者等をねらったいわゆるヤミ金融(出資法の上限金利に違反して貸金業を営む者の総称)による被害も多発し、自殺者を生み出すまでの深刻な事態に立ち至っており、多重債務問題は、我が国における一つの重大な社会問題となっている。
そもそも、多重債務問題が発生する根本的な原因として、貸付金利が高いことがあげられる。貸し手である消費者金融業者の銀行等からの調達金利が約2パーセントと著しい低率であること、フランス・ドイツなどにおいては消費者向けの貸し付けの金利水準が1桁台後半から10パーセント台前半に押さえられていること等と比較すれば,我が国における消費者向け貸出しの制限利率は、現行出資法所定の29.2パーセントを大幅に下回ってしかるべきである。
また、現行の利息制限法は民事上の制限利率を規定する強行法規であり、その規制内容と刑罰の対象となる利率とが異なっていること自体が正常な状態ではないといえる。利息制限法の制限利率を超過しているが出資法第5条2項所定の利率を超えない貸付けに刑事罰が科されない結果、民事上無効だが刑事罰の対象にならない領域(いわゆる「グレーゾーン」)が存在しているが、これらを統一し、グレーゾーンというあいまいな領域は直ちになくすべきである。
以上の理由から、出資法第5条2項の見直しに当たっては、直ちに同項の制限金利を利息制限法第1条の制限金利まで引き下げ、同法の制限利率を超える金利の支払いは民事上無効でかつ刑事罰の対象にもするという、民事・刑事の金利規制の統一化を図るべきである。同時に,高金利業者に対する取締り強化のための体制づくり等、金利規制を実効あるものにするための諸方策を早急に講じるよう、関係諸機関に強く要請するものである。
2003年(平成15年)6月18日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 松 尾 良 風