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平成15年6月18日会長声明

2003年06月18日

国選弁護人の報酬引き下げに抗議し、増額を求める会長声明

 国選弁護人の報酬額は、2000年(平成12年)度から地方裁判所における標準的事件(3開廷)について8万6400円とされ、その後2年間据え置かれていた。ところが、本年度政府予算においては、これが8万5600円に引き下げられた。

 国選弁護制度は、刑事被告人の憲法上の権利である弁護人依頼権を実質的に保障しようとする制度である。この制度趣旨に照らせば、国選弁護人の弁護活動を保障するための経済的な担保が必要不可欠であり、国選弁護人に適正な報酬が支払われることは、憲法上の要請というべきである。

 現在の刑事裁判の実情として、国選弁護人が選任される比率は極めて高く、7割を超えるものとなっている。国選弁護人は、私選弁護人と何ら相違のない弁護活動を求められる一方で、その報酬は極めて低額となっている。しかも、記録謄写料、交通費、通信費などの実費については原則として支給されず、国選弁護人の負担となっているのが実情である。このような実情においては、国選弁護制度は国選弁護人の犠牲と負担によって維持されているといっても過言ではない。

 政府の司法制度改革推進本部においては、2006年(平成18年)度から国費による被疑者弁護制度を導入することを前提に検討作業が進められ、平成16年度通常国会において、その法制化が予定されている。この公的弁護制度の実現には、現状を大きく上回る弁護士の確保が必要不可欠である。そのためには、国選弁護人の報酬を適正なものとし、刑事弁護の担い手を十分に確保することが不可欠の前提というべきである。

 本年度政府予算は、現状でも不十分な国選弁護人の報酬をさらに減額するというものである。これは、国選弁護人の弁護活動を抑制し、ひいては、被告人の弁護人依頼権を侵害するとともに、将来の国費による被疑者弁護制度の実現を阻害するものといわざるをえない。

 よって、当会は、本年度政府予算における国選弁護人報酬の引下げに強く抗議するとともに、国に対し、国選弁護人報酬の大幅な増額のために必要な予算措置を講じるよう強く求めるものである。

 

 

 2003年(平成15年)6月18日

       仙台弁護士会

       会 長  松  尾  良  風

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