司法修習生に対して、生活費等の修習資金を支給するいわゆる給費制は、昭和22年の司法修習制度の開始時から続けられてきた制度であるが、平成23年11月に廃止され、貸与制に移行した。これにより、新第65期司法修習生以降の司法修習生は、貸与金などで修習費用をまかなわなければならなくなった。
当会は、これまで公表してきた会長声明等において、給費制の廃止によって生じる様々な弊害を指摘し、給費制の復活を繰り返し求めてきた。しかし、給費制は復活していないところ、現に弊害が生じており、その1つが法曹志願者の減少である。
法科大学院に進学するために受験しなければならない適性試験の志願者数は、平成15年には大学入試センター実施のものが3万9350人、日弁連法務研究財団実施のものは2万0043人であったところ、平成26年に日弁連法務研究財団が2回実施した適性試験の志願者数(実数)は4407人まで減少している。また、法科大学院への入学者も、平成26年度には2272人と、過去最少を記録している。
給費制の廃止がこのような法曹志願者の減少に影響を及ぼしていることを裏付けるものとしては、日弁連が司法修習生を対象に行ってきたアンケート調査がある。新第65期司法修習生を対象にした調査では、28.2%の司法修習生が司法修習を辞退することを考えたことがあると回答し、その理由として、86.1%が貸与制への移行、74.8%が弁護士の「就職難」・経済的困窮を挙げていた。そして、その割合はその後の第66期、第67期司法修習生においてもほぼ同じ程度となっている。実際に、給費制が廃止されたことを理由として司法試験に合格しながら司法修習を断念した者の存在も報告されている。
現在の弁護士の就職難などの状況からすれば、司法修習期間に指導担当の弁護士や裁判官、検察官の下で長時間の研修に携わっているにもかかわらず、「無給」の状態を強いられ、多額の貸与金債務を負うことは大きなリスクと感じて、法曹志願者が減少するのも不思議なことではない。
このような法曹志願者の減少は、司法試験を通じた選抜機能を低下させ、ひいては法曹の質の低下という事態を招くことになりかねない。
そもそも給費制には、司法修習生が司法修習に専念することができるように経済的に支えるという側面にとどまらず、国の責務において三権の一翼としての司法を担う法曹を養成するという側面があった。そして、養成された法曹は給費を受けたことの意味を理解し、期待される役割に応えようとしてきた。充実した司法を維持形成していくためには、このような給費制の意義を再確認する必要があり、かかる観点を踏まえれば、司法作用の受益者である市民の立場からも、給費制を復活させることは、十分に理解されるものと考える。
司法修習生への経済的支援も含む法曹養成制度については、今まさに,法曹養成改革推進会議の下に置かれた法曹養成改革顧問会議において議論がなされており、上記会議の設置期限である本年7月15日までには一定の方向性が示される予定である。
当会としては、上記会議において、給費制の意義を踏まえたとりまとめがなされ、1日も早く給費制が復活することを強く求めるものである。
2015年(平成27年)2月5日
仙 台 弁 護 士 会
会長 齋藤拓生