個人情報保護各法案に反対し、実効的な個人情報保護法制の確立を求める会長声明
去る4月8日から今国会では、個人情報保護関連5法案(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案、個人情報の保護に関する法律案、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案、情報公開・個人情報保護審査会設置法案、同法案要綱案)の審議がなされている。
これらの法案は、個人情報の保護に関する法律案についてメディア規制にならないように若干の文言上の配慮をしたことと、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案について公務員に対する罰則規定を若干強めたこと以外は、昨年12月にいったん廃案になった従前の法案と変わっていない。
すなわち、たとえば個人情報の保護に関する法律案については、一般の民間事業者一般に対し、具体的義務を課した上、主務大臣が助言、勧告、命令等の権限を持ち、命令違反には罰則を設けているなど、事業者に対する広範な介入を招くおそれは依然として高いといった問題を抱えたままである。また、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案についても、なんら第三者機関を置かずに、利用目的の変更、目的外利用や行政機関同士の情報提供を広く認める反面、その必要性・相当性についてチェックできる手続的配慮がないなど、国民の個人情報が不当に行政機関内部で流通する危険性が大であるといった問題を抱えたままである。さらに、上記両法案には、思想、信条、病歴、犯罪歴などのいわゆるセンシティヴ情報の収集制限をしていないといった問題もある。
制度の根幹にかかわる基本的なこととして、個人情報の保護に関する法律案については、一般的規制を見直して、当面は、個人信用情報、医療情報、教育情報といった分野ごとの特性に応じた個人情報保護制度が整備されることをめざすべきである。他方、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案については、全個人情報のファイルの作成を義務づけ、利用目的の変更、目的外利用などの禁止又は本人への通知を必要とする規定を設ける、行政機関の個人情報の取り扱いの必要性・相当性をチェックする第三者機関を設置する、原告の住所地の地方裁判所に提訴できるといった管轄を認める、といった点が盛り込まれるべきである。
当会は昨年6月20日にも同趣旨の会長声明を出しているが、こうした基本的なことについての修正がなされない限り、当会は、上記個人情報保護関連5法案に、あらためて強い反対の意思を表明せざるを得ない。
2003年(平成15年)4月24日
仙台弁護士会
会 長 松 尾 良 風