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東日本大震災から4年を迎えての震災復興支援に関する会長声明

2015年03月06日

1 はじめに

東日本大震災の発生から4年を迎えようとしている。この間,震災被害からの復旧・復興が進みつつある一方で,現在でもなお多くの被災者が仮設住宅等での生活を余儀なくされ(平成27年1月31日現在で,宮城県全体で6万9188人),いまだ生活再建の見通しが立たず,将来に対する不安に苛まれている。他方で,仮設住宅等からの災害公営住宅等への移行が始まった被災自治体もあり,移行に伴う生活再建の兆しも生まれつつある。

また,被災地域における復興事業は,震災から4年を迎えようとしている今日においても,進捗率は芳しくなく,いまだに事業再建の見通しがつかない事業者あるいは事業再建をあきらめざるを得ない事業者も数多く存在する。

2 当会のこれまでの活動等

(1)被災者に対する直接的な支援

当会は,震災発生後,被災者と被災地の復旧と復興を支援し,もって基本的人権を擁護し社会正義の実現を図るという弁護士本来の責務を果たすべく,会の力を結集して全力で取り組むことを宣言するとともに(「東日本大震災の復興支援に関する宣言」2011年(平成23年)5月20日),被災者の意思を最大限尊重し,被災者一人一人が立ち直るための「人間の復興」という基本視座のもと,被災者一人一人の生活再建のための支援活動を続けてきた。

当会は,法的支援を必要とする被災者の要望に応えるべく,震災直後から今日に至るまで,無料相談等(震災直後に創設した震災ADR制度も含む)を実施し,その相談件数あるいは解決件数は膨大な数に及んでいる。今日においても,被災者からの様々な法的支援のニーズは依然として多く存在し,当会としては,引き続き,「人間の復興」という基本理念を再確認しつつ,被災者の支援に尽力する所存である。具体的には,当会は,今後,電話による無料相談,被災地への無料出張相談などを実施し,さらなる被災者支援を拡充する所存である。

(2)制度・立法に関する提言・意見表明

また,当会は,震災直後からの相談活動や震災ADRで得られた情報を立法事実として,被災者の生活再建,震災復興に関し,日弁連その他関係機関とともに,多くの提言や意見表明を行ってきた。

今年度は,いわゆる二重ローン問題に関し,被災ローン減免制度(個人版私的整理ガイドライン)の問題点・限界を指摘し,大規模災害における二重ローン問題の不可避性に鑑み,災害発生後に二重ローン問題に速やかに適用される制度創設の必要性を訴え,策定されるべき制度の具体的内容を摘示した「二重ローン問題対策に関する立法措置を求める意見書」による提言を行った。

また,仮設住宅等から災害公営住宅への移行にあたり,被災自治体によっては入居要件として連帯保証人や税金の滞納がないこと等を要件とするものがあり,被災者の被災状況・生活状況によっては,上記要件のために入居を断念せざるを得ない被災者も相当数に上っており,被災者の生活再建を妨げている事態が生じている。そのため,災害公営住宅の入居要件の適正化を求める会長声明を発した。

他方で,人命・住宅財産の保護等につき海岸堤防建設の重要性を指摘しつつ,その建設地域の生物多様性や環境・住民意思への配慮を求める意見書を発した。

3 今後対応すべき問題について

復旧・復興が徐々に進む中で,以下のような問題・課題も出現している。

(1)住まいの再生

被災者の多くは,様々な要因から生活再建が進まず,仮設住宅等での生活を余儀なくされている。今後加速するであろう仮設住宅等から災害公営住宅等への移行にあたって,被災者の生活再建支援は極めて重要な課題である。現在の仮設住宅等での生活において抱えている問題・悩みに真摯に耳を傾けつつ二重ローン問題の解消など生活再建支援をすることが肝要である。当会は,相談体制の拡充を図りつつ,被災自治体・関連団体と連携等して,引き続き、これら仮設住宅等の被災者の生活再建支援に取り組む所存である。

また、復興事業にあっては,被災者個人の住まいの再生が重要課題である。この点,被災地では現在、災害公営住宅等のいわばハード面の施策については進行しているところだが,阪神・淡路大震災の反省を踏まえるならば、災害公営住宅等へ入居する被災者へのいわばソフト面での支援が課題となる。すなわち,入居先でのコミュニティ形成支援,孤独死の回避などである。当会としては,提言等を行い,相談等を充実させ,関係機関と連携して支援を行う所存である。

(2)生業の再生

被災事業者の再生も大きな課題である。被災事業者には,再生の努力をするものの取引先離れやランニングコストの増大など,なかなか再生に至らない事業者が多く存在する。当会としては,被災からの経済的復興に向けて、法律問題・法制度の側面での支援という観点から,提言等を行うとともに,引き続き被災事業者支援を行う所存である。

(3)相続関係不明地等の問題

住まいや生業の再生に関して,移転先用地の確保や用地買収等の際に,土地所有者の相続関係が不明な物件や、相続人の一部に行方不明者・所在不明者がいる物件が判明するという事態が、引き続き生じている。

当会としては,個人の財産権を尊重しつつ,大規模災害にあたっての復興促進という観点から,不在者財産管理制度や相続財産管理制度の利用促進を図るとともに,新たな法制度の策定も視野に入れた提言等を行う所存である。

(4)災害弔慰金問題

震災関連死にかかる災害弔慰金の支給・不支給をめぐっては,宮城県内でも複数の係争案件がみられる。この問題の背景には,支給・不支給について各自治体でばらつきがあり,支給判断にあたっての審査基準の不明確さ・不統一がある。そこで,当会としては,各自治体に対し,審査基準の明確化・統一化を求める提言を行うととともに、災害弔慰金の申請から審査段階等における弁護士による支援の必要性を認識し,透明性ある支給の確保に努める所存である。

(5)原発問題

福島第一原子力発電所の事故によって,福島県からの避難者はもとより,宮城県内においても多くの被害者が存在する。これら被害についての賠償問題は,なお多くの課題が山積している。特に,原発被害における被害の広汎性及び特異性等に鑑みれば,従来の不法行為法の理論では対応しきれず,被害者救済に不十分な点があることは否定できない。

この点,当会としては,原発被害の実態に即した被害者救済の観点から,あるべき法令解釈及び賠償制度の構築などをはじめとした被害の回復に向けて,学習会等を通じて,検証・探求を行う所存である。

4 法制度の抜本的検証

被災地における復興の事業は,既存の法制度の枠組み,行政機能にとらわれてしまっているがために,事業ごとの縦割りの弊害等が生じ,各被災自治体において,柔軟かつ迅速な復旧・復興活動ができていない,それがために被災者・被災事業者の再建が遅々として進まない,という現状がある。

そこで,当会は,平成26年7月,東北弁護士会連合会定期大会シンポジウムにおいて,いわゆる災害特区をはじめとする災害法制の総合的・抜本的検証をし,復興に関する予算の確保と配分方法,自治体における復興計画策定とそれに関する住民合意形成の在り方,自治体のマンパワーの確保と自治体相互間の支援の方策,被災住宅の移転と再建方法及び防災と復興等の問題点について基調報告を行った。

そこでは,国(政府)が、住宅再建や事業所再建等の災害復興事業の遂行にあたり,憲法上、公金を個人資産の形成に使用することは許されないとの立場をとっていることが浮き彫りとなった。しかしながら,わが国の憲法の条項は公金を個人資産の形成に使用することを制約しておらず、むしろ、生存権保障を謳っていること等からして,大規模災害にあっては,個人あるいは事業者の再建・再生のために,結果として個人資産の形成となっても公金を使用することをためらってはならないはずである。このようないわば公金の個人資産形成への支出の制約という問題点を克服せずして,柔軟かつ迅速な復旧・復興活動はできないのでる。

当会は,被災地弁護士会である当会に課せられた使命として,この問題の克服に向けて引き続き検証と提言を行う所存である。

5 まとめ

いまなお被災者は,いわゆる二重ローン問題,住宅の再建等をはじめとする様々な現実的な問題に直面し,多くの不安を抱えている。東日本大震災から4年を迎えるにあたり,当会は,引き続き「人間の復興」という基本的視座に基づき,より一層充実した相談体制の構築,情報提供の充実を図り,被災者の不安を解消し,被災者の生活基盤の確保・充実のための法的支援や被災事業者の復興に向けた支援活動に邁進するとともに,併せて災害法制の総合的・抜本的検証に取り組む決意であることをここに宣言する。

 

2015年(平成27年)3月6日

                            仙 台 弁 護 士 会

                               会長 齋 藤 拓 生

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