宮城県は,現在開会中の県議会において,「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(以下「現行条例」という。)の一部を改正する条例案(以下「改正条例案」という。)を提出している。改正条例案は,現行条例の名称を「迷惑行為防止条例」に改めるとともに,正当な理由なく行う「つきまとい,待ち伏せし,進路に立ちふさがり」,「見張り」,「押し掛けること」,「面会その他の義務のないことを行うことを要求すること」などを反復する行為を「嫌がらせ行為」として禁止し,常習の場合は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処し,常習でなくても6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処するという規定を新設しようとしている。
確かに,ストーカー規制法の対象となっていない「つきまとい」などによる被害を防止する必要性があることは否定できない。しかし,上記「嫌がらせ行為」の禁止規定は,目的による限定もなく,規制対象も広範かつ不明確であり,その上,罰則まで設けているため,運用次第では市民運動や労働運動,マスコミ等の報道・取材活動など憲法が保障する言論・表現の自由,労働基本権を幅広く制約するおそれがある。
改正条例案は,規制対象である「嫌がらせ行為」の限定化を図るために,つきまといや面会要求などについては,「身体の安全若しくは住居,勤務先,学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の平穏若しくは名誉が害され,又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る」としているが,主観的評価が入り込む余地があるため,限定機能は乏しいと言わざるを得ない。また,改正条例案は,「正当な理由」という要件によって禁止対象の限定を試みているが,「正当な理由」の解釈如何によっては改正条例案の本来の趣旨を超えて,本来正当なものとして保障されるべき市民運動や労働運動等が「嫌がらせ行為」に該当するとして不当に制限され,又は萎縮してしまうおそれがある。
当会は,市民運動,労働運動及び取材活動などの憲法で保障されている基本的人権に基づく活動が改正条例案本来の趣旨を逸脱して不当に制約されることのないよう,より規制対象を明確化して限定することを強く求める。
2015年(平成27年)3月12日
仙 台 弁 護 士 会
会長 齋 藤 拓 生