本年7月15日,衆議院の我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会において,いわゆる平和安全法制整備法案及び国際平和支援法案(以下併せて「本法案」という。)の採決が強行され,翌16日,本会議において可決された。
本法案は,我が国に対する武力攻撃が発生していないにもかかわらず,他国間の戦争に加わっていくことを意味する集団的自衛権の行使を可能にするとともに,自衛隊の武器使用権限及び他国軍隊に対する支援活動を大幅に拡大するものである。
当会は,本年6月19日付けの会長声明で,本法案が,憲法第9条に違反し,また,憲法改正手続(憲法第96条)を潜脱して実質的に憲法第9条を改変する点で立憲主義及び国民主権にも反することを指摘して,その成立に反対し,廃案を求める意見を表明していた。
このような本法案の違憲性は,法案が5月26日に審議入りした後も,審議が進むにつれて解消されるどころか,むしろより明らかとなっていた。すなわち,本年6月4日に開催された衆議院憲法審査会で,与野党の推薦により参考人として出席した憲法学者3名全員が,集団的自衛権行使を可能にすることは憲法違反であると言明し,同月22日に行われた特別委員会の参考人質疑でも,元内閣法制局長官2名が,集団的自衛権の行使容認は憲法違反であるなどと述べた。また,本法案に関する見解を明らかにした2名の元最高裁判事や,多数の憲法学者,文化人らも,本法案は憲法に違反するとして反対の意思を表明しており,このような状況の下,直近の各種世論調査においては,本法案に関する政府の説明は不十分であるとの声が8割に達し,今国会での成立に反対との声は6割を超えていた。
ところが,与党は,本法案について,特別委員会での採決を強行したうえ,衆議院本会議において本法案を可決した。元最高裁判事や元内閣法制局長官を含む多くの法律家,学者,文化人らによる憲法違反との指摘や,多くの国民の反対・懸念の声を無視して,本法案の採決を強行し可決したことは暴挙というほかない。
本法案は,集団的自衛権の行使を容認するという法案の根幹部分において憲法第9条に違反するうえ,「存立危機事態」の概念の不明確性から,時の政府・与党の判断により歯止めのない集団的自衛権行使が行われる危険性も高い。その他,本法案が予定する他国軍隊への支援活動は,他国の武力行使との一体化が避けられないなど,本法案は多くの基本的な部分で憲法に違反している。本法案の根幹ないし基本部分における違憲性を払拭することは不可能とも言え,廃案とするほかない。
よって,当会は,衆議院における拙速な審議及び採決の強行に強く抗議するとともに,良識の府である参議院において十分な審議を尽くし,本法案を廃案とすることを求める。
平成27(2015)年7月17日
仙 台 弁 護 士 会
会長 岩 渕 健 彦