本年6月25日,名古屋拘置所にて,死刑確定者1名に対する死刑が執行された。上川陽子法務大臣による初めての死刑執行であり,第二次安倍内閣以降で死刑が執行されたのは,昨年8月以来,7回目で,合わせて12人になる。
死刑制度は,罪を犯した人の更生と社会復帰の観点から見たとき,その可能性を完全に奪うという問題点を有しているものであり,また,誤判・えん罪による生命侵害という取り返しのつかない危険を内包するものである。それゆえ,当会はこれまで,政府に対し,死刑の執行を停止した上で,死刑制度の存廃について,国民が十分に議論を尽くし意見を形成するのに必要な情報を広く国民に公開して,国民的議論を行うよう繰り返し求めてきた。
昨年3月27日には,静岡地方裁判所が,袴田巖氏の第二次再審請求事件について再審を開始し,死刑及び拘置の執行を停止する決定をしたが,これは,えん罪による生命侵害の危険性を現実のものとして世に知らしめたものであった。
世界に目を向けても,死刑を廃止又は停止している国は140か国に上っており,また,昨年7月23日に採択された国連自由権規約委員会の第6回日本定期報告に関する総括所見は,死刑廃止を目指す自由権規約第二選択議定書への加入を考慮することや,再審あるいは恩赦の申請に死刑執行停止効果を持たせたうえで死刑事件における義務的かつ効果的な再審査の制度を確立することなどを勧告している。
そのような中,政府が死刑を執行したことは,死刑制度が基本的人権に関わる極めて重要な問題であることへの配慮を著しく欠いたものであり,死刑の執行を停止し死刑制度の存廃を含む抜本的な検討と見直しをする必要性を軽視したものであると言わざるを得ない。
よって,当会は,政府に対し,今回の死刑執行について,断固抗議するとともに,死刑制度が最も基本的な人権に関わる重大な問題であることを踏まえ,死刑廃止が国際的潮流となっている事実を真摯に受け止め,死刑の執行を停止した上で,死刑に関する情報を広く国民に公開し,死刑制度の存廃に関する国民的議論を開始するよう改めて求める。
2015年(平成27年)7月23日
仙 台 弁 護 士 会
会長 岩 渕 健 彦