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特定商取引法に事前拒否者への勧誘禁止制度の導入を求める意見書

2015年08月27日

2015年(平成27年)8月27日

仙 台 弁 護 士 会

        会長 岩渕 健彦

第1 意見の趣旨

特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)における訪問販売及び電話勧誘販売の勧誘規制の見直しにあたり,以下の立法措置を講ずることを求める。

1 事前拒否者に対する勧誘禁止制度の導入

あらかじめ,訪問又は電話による勧誘行為を拒絶する意思を表示している消費者に対して,訪問又は電話による勧誘行為を禁止するという制度(いわゆるオプト・アウト規制)を導入すべきである。

具体的には,訪問販売において,あらかじめ,訪問勧誘を拒否する意思を有する旨の表示(勧誘お断りステッカー)を戸口等に掲示・貼付した消費者に対する訪問勧誘禁止制度(ステッカー方式のDo-Not-Knock制度),もしくは公的な訪問勧誘拒否登録簿に住所を登録した上,登録した者に配布される登録済みを証するステッカーを戸口等に掲示・貼付した消費者に対する訪問勧誘禁止制度(ステッカー方式とレジストリー方式併用のDo-Not-Knock 制度)を導入すべきである。

また,電話勧誘販売において,あらかじめ公的な拒否登録簿に電話番号を登録することによって,電話による勧誘行為を拒絶する意思を有する消費者がその意思を表示した場合,これがなされた電話番号に対する電話勧誘を禁止する制度(Do-Not-Call 制度)を導入すべきである。そして,当該電話勧誘禁止制度では,後述するとおり,リスト洗浄方式が採用されるべきである。

2 上記1に加え,その規制に反する勧誘行為を効果的に抑止するため,必要な行政処分を行えるものとすべきである。また,規制に反してなされた勧誘行為によって締結された契約については,消費者が無効または解除を主張することができるものとすべきである。

第2 意見の理由

1 不招請勧誘の規制の必要性

消費者の要請なき勧誘行為(いわゆる「不招請勧誘」。)は,私生活の平穏を害し,勧誘される者にとって,多くの場合,それ自体が迷惑な行為である。現に,消費者庁が平成27年5月にまとめた「消費者の訪問勧誘・電話勧誘・FAX勧誘に関する意識調査」によれば,訪問による勧誘・電話による勧誘を受けたいと思うかの問いに約96%の消費者が「全く受けたくない」との回答をしている。

また,訪問勧誘や電話勧誘は,唐突かつ一方的な勧誘行為となりがちであることから,事業者と消費者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差(消費者基本法第1条,消費者契約法第1条各参照)がより顕著となって消費者が本来必要としない不本意な契約を締結させられることも多く,実際,訪問や電話による勧誘による消費者トラブルは後を絶たない。内閣府消費者委員会特定商取引法専門調査会委員会(第4回)における消費者庁「訪問販売・電話勧誘販売等の勧誘に関する問題についての検討」(2014年4月28日)においても,家庭訪問・電話勧誘販売が増加傾向にあるとされており,とりわけ訪問販売・電話勧誘販売を受けた者の年齢別構成割合では,60歳以上が5割を超えていて,判断能力等が不十分である高齢者の被害の要因となっていることが示唆されている。このように,訪問及び電話による不招請勧誘は消費者被害・悪質商法の温床になっているといえる。

諸外国に目を向ければ,電話勧誘販売への規制について,ヨーロッパはEU指令において後述するオプト・イン規制もしくはオプト・アウト規制を義務づけているし,南北アメリカ地域ではアメリカ,カナダ,メキシコ等が,アジア・オセアニア地域では,オーストラリア,インド,シンガポール,韓国がオプト・アウト規制を採用している。このように,不招請勧誘に関する規制制度は既に多くの国で導入されている。

そもそも,消費者は,事業者と取引をするかしないかの自由を有しており,取引のための勧誘を受けるか否かについても,消費者の自己決定に委ねられるべきものである(「消費者基本計画」2015年3月24日閣議決定参照)。上述した不招請勧誘の問題性を踏まえれば,消費者が自主的かつ合理的な選択ができるような状況を制度的に確保するための規制が必要であるが,現在のところ,特定商取引法には訪問勧誘,電話勧誘における契約を締結しない旨の意思を表示した者に対してその後引き続き勧誘を行うこと及び再勧誘を行うことを禁止している(特定商取引法第3条の2第2項,同法第17条。継続勧誘・再勧誘の禁止)のみであって,拒否される前に接触すること自体は規制の対象となっていないし,ひとたび事業者の巧妙な勧誘が始まってしまうとこれを拒否するのが困難であるために,現行法の規制は不十分である。諸外国の規制状況に鑑みると,我が国では不招請勧誘の規制についての対応が遅れていると言わざるを得ない。

2 規制の方式について

不招請勧誘の規制のあり方は,大きく二つに分けられる。

①消費者からの要請や同意があってはじめて勧誘できるという規制方式(オプト・イン方式)と,②消費者から訪問や電話勧誘を拒絶する意思の表明がなされた場合に限って,当該消費者に対する訪問や電話による勧誘を禁止する規制方式(オプト・アウト方式)がある。

上述のように,訪問販売や電話勧誘販売を望まない消費者が圧倒的に多数であることや,訪問販売や電話勧誘が悪質商法の温床となっていることを踏まえれば将来的にはオプト・イン規制を導入することが望ましい。

しかし,現時点で一律に訪問・電話による勧誘を原則禁止とする効果を有するオプト・イン方式を導入することは,社会的な影響も大きいと考えられる。また,後述する事業者の営業の機会の確保という点に最大限の配慮をするとすれば,まずは勧誘の事前拒否を認めるタイプのオプト・アウト規制の導入を目指すべきである。

3 訪問勧誘・電話勧誘に関する具体的な方式について

⑴ 訪問勧誘禁止制度について

訪問勧誘禁止制度(Do-Not-Knock 制度)には,2つの具体的制度がありうる。訪問販売の勧誘を受けたくない消費者が,戸口等に「訪問販売お断りステッカー」などを貼付する方式(ステッカー方式)と,公的な拒否登録簿に住所を登録(レジストリー方式)して勧誘を拒絶する意思を表示し,これがなされた住所への勧誘を禁止する方式である。

特定商取引法において,訪問勧誘禁止制度を導入するにあたっては,ステッカー等に法的効果を与える制度(ステッカー方式)が,消費者にとって勧誘の事前拒否の意思表示が簡便であって,かつ,事業者が容易に確認することもできることから好ましい。しかし一方で,ステッカー方式による意思表示に対しては,個別商品への拒否か否か不明であること,町内会等によるステッカー配付により一律貼付されること等から,個別かつ真意に基づく意思表示とはいえないという批判がある。

このような批判に対しては,消費者が自らの判断に基づいて玄関の戸口といった目立つ場所に貼付するのであるから、まさに訪問販売すべてを断る意思に基づいて貼付しているといえ,これを個別かつ真意に基づく意思表示といえないという批判は妥当でないと考えるべきであるが,他方で,後述する民事上の無効や解除の制度を導入するとした場合,上記の指摘を前提とするとステッカー方式では当該無効・解除の主張のための立証に困難が生じる場合も想定できる。

したがって,ステッカー方式を基本としながらも,消費者の意思を明確にし,上述した難点を解消するといった観点から,訪問販売拒否登録簿に登録した消費者に対し,登録済みステッカーを配布し,そのステッカーを掲示・貼付した消費者に対する訪問勧誘を禁止する方法(ステッカーとレジストリー方式の併用)も検討されてよい。

⑵ 電話勧誘禁止制度

電話勧誘禁止制度についても,2つの方式がありうる。事業者が,登録機関に登録をしている電話勧誘拒否者の電話番号の開示を要求し,登録機関がこれを事業者に開示する方式(リスト取得方式)と,拒否登録確認の方法として,事業者が手持ちの電話番号を登録機関に照会し,拒否登録者の番号を除去または判別する方式(リスト洗浄方式)である。

前者の方法による場合,勧誘行為の事前拒否者の電話番号が流出・漏えいする危険性があることも考えられ,プライバシーの観点や悪徳業者などの存在に鑑みれば,リスト洗浄方式が採用されるべきである。

4 営業の自由との関係について

本件の規制は,営業の自由に対する侵害であるとして,導入に反対する意見もある。しかし,オプト・アウト規制は,訪問勧誘・電話勧誘を一律に禁止するオプト・イン規制よりも緩やかな規制であって,事前に勧誘を拒否する者に対する勧誘の禁止であるのであるから,営業活動への影響も最小限となり,上記規制の必要性を鑑みれば手段に合理性も認められるから,営業の自由に対する過度な規制であるとの批判は当たらない。そもそも,既に特定商取引法第12条の3,同第36条の3,同第54条の3では,電子メール広告に対して事前の同意がある場合のみ送信ができるというオプト・イン方式の規制(オプト・アウト方式の規制よりも強度な規制である。)を採用していることからしても当該批判は当たらない。

また,当該制度は,事前に勧誘行為を拒否する者を事業者が判別することが可能となるのであるから,事業者が無駄な勧誘行為をしないこととなって,むしろ効率的な営業に資する。上述のとおり,消費者からの要請のない勧誘行為が多くの消費者にとって迷惑行為と考えられている現状も踏まえれば,このような営業活動によって利益を得る営業方法は見直されるべきであって,事業者の経済活動を正常な方向へと導くものとなる。

5 実効性確保のための制度

事前拒否者に対する勧誘禁止制度を導入するにしても,制度の実効性を確保するために,違反者に対しては,行政処分を設けることが必要である。

また,制度の実効性の確保に加え,消費者の利益を保護する観点から,違反した事業者が得た不当な利得を返還させ,違法な勧誘による被害を容易に回復させるため,規制に違反した勧誘行為によって契約が締結された場合,消費者は,当該契約の無効または解除を主張することができるという民事規定を導入することも必要である。

以上

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