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民法の成年年齢引下げに反対する会長声明

2015年08月27日

選挙権年齢を18歳以上に引き下げる公職選挙法改正案が本年の通常国会で成立した。同法附則では、民法等の法令の規定について検討し、必要な措置を講ずるとされており、これを受けた与党自由民主党は、成年年齢に関する特命委員会を設置した。同委員会は7月24日、民法第4条の成年年齢を、現行の20歳から18歳に引き下げるべきとする提言をとりまとめることとしたと報じられている。

しかし、民法の成年年齢を引き下げることには以下のような問題がある。

第1に、未成年者取消権喪失による消費者被害増加の問題がある。

民法は、5条2項で、未成年者の法律行為の取消権を定めており、成年年齢が18歳に引き下げられた場合、18歳、19歳の若者が取消権を奪われることになる。進学や就職により、初めて親元を離れて新生活を始める者が多い年代である18歳、19歳の若者に取消権があることによって、社会経験が乏しく、判断能力が不十分な若者が保護されてきたものであり、それまでと全く違う環境で、相談できる第三者が周囲にいない状態に初めて置かれた若者が消費者被害を受けやすいことを考えると、このような年代こそ未成年者取消権によって保護されなければならない。

この点、消費生活センターにおいては、未成年者取消権を失う20歳から相談件数が急増するとの報告がある。20歳の誕生日を狙って勧誘を行う悪質業者の存在も指摘されており、未成年者取消権の存在が若者を消費者被害から守る抑止力となっていることは明らかである。このため、成年年齢を引き下げれば、未成年者取消権を失った18歳、19歳の若者の消費者被害が増加することが容易に想定される。

成年年齢の引下げを求める平成21年10月28日付の法制審議会の意見でも、成年年齢の引下げ前に、若者の自立を促す施策や消費者被害の拡大防止のための施策が実施されるべきとされているが、そのような施策の実施は未だ不十分な状況にあり、このような現状で成年年齢を引き下げれば、若者の消費者被害が増大することは明らかである。

第2に、クレジットカード使用の増加により、若者の多重債務が増加する危険があるという問題がある。

未成年者がクレジットカードを作成する際には親権者の同意が必要とされており、20歳を境にクレジットカードの使用が大きく増加しているとの報告も存在していることを考えると、未成年の間はクレジットカードの作成、使用が抑制されていると推認される。成年年齢を引き下げた場合、新たに成年となった18歳、19歳の若者のクレジットカードの作成、使用の大幅な増加が予測されるところ、現代社会ではクレジット決済を利用した電子商取引により、非常に簡単に高額商品を購入することができるため、18歳、19歳の若者のクレジットカードの作成、使用が増加すれば、高額商品の購入により、高校生を含む若者の多重債務が増加する危険性が高い。

第3に養育費支払が求められる期間が短縮されてしまう問題がある。

養育費は未成熟子に対する監護費用の分担とされているが、実務上成年に達した後は打ち切られることが多い。また、成年に達した子自身が大学に進学した場合の学費等を扶養料として親に請求することは、法律上可能であるが、実務上の困難があるとみられている。そうした状況において、成年年齢が引き下げられるならば、家庭の経済事情等により将来を選択する幅が狭まる若者が増加することは明らかである。

公職選挙法の選挙権年齢の引下げと異なり、民法の成年年齢の引下げには以上のような様々な問題が生じ、若者に多くの不利益を及ぼす。

よって、当会は、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることに反対するものである。

2015(平成27)年8月27日

                   仙 台 弁 護 士 会

                   会長 岩 渕 健 彦

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