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「宮城県薬物の濫用の防止に関する条例」の警察職員による立入調査等の規定に強く反対する会長声明

2015年09月17日


現在開会中の宮城県議会において,「宮城県薬物の濫用の防止に関する条例案」(以下,「本条例案」という)が議員提案され,9月定例会での成立に向けて議論されている。
本条例案は,公安委員会の指示により警察職員が令状(事前審査)なしに「知事指定薬物等を業務上取り扱う場所その他必要な場所」への立入調査をする権限,また関係者に質問する権限を認めており(第16条第3項),さらに立入調査を拒む等した者や,質問に対する答弁をしなかった者に対しては20万円以下の罰金に処するとしている(第32条第3号)。
しかし,これらの規定は,以下に述べるとおり重大な問題がある。
まず,本条例案が定める立入調査は,警察職員がこれを行うことからすれば,直ちに違法薬物の摘発及び薬物の所持者・管理者の逮捕等に繋がる可能性が高く,実質的には刑事手続である捜索に該当しうる。捜索は,憲法35条により,裁判所が発付する令状に拠らねばならないと定められているが,本条例案の立入調査は無令状での捜索を実質的に認める内容となっており,憲法に違反するおそれが強い。
また,本条例案が定める質問権は,警察職員の質問に答弁しなかった者に対して罰金を科するとして,対象者の答弁を強制するものである。しかし,かかる質問権は,警察職員により行われる点,対象者の答弁内容によっては立入調査と同じく即時の逮捕等に繋がることからすれば,実質的には刑事手続における取調べに該当しうるものである。憲法38条は,何人も自己に不利益な供述を強制されないとして黙秘権を保障しているところ,罰金により答弁を強制する本条例案は,この点でも憲法に違反するおそれが強いと言わざるを得ない。
本条例案は,立入調査や質問の権限について「犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない」という規定を設けている(第16条第5項)。しかし,刑事責任の追及を直接的な目的としない手続においても令状主義の保障は及びうるし,刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を有する行政手続においては黙秘権が保障される(最高裁昭和47年11月22日大法廷判決を参照)。したがって,上記の規定は本条例案の憲法違反のおそれを払拭するものではない。
本条例案は,形式的には行政手続によって,刑事責任追及のための資料の取得収集を可能とするものであり,憲法及び刑事訴訟法の規制を潜脱するものであり,憲法違反の疑いがきわめて強い。なお,警察職員による立入調査等を認めた規定については,仙台地方検察庁も,憲法違反の可能性に言及している。
以上の理由により,当会は,「宮城県薬物の濫用の防止に関する条例」の,警察職員による立入調査等の規定に強く反対する。

2015(平成27)年9月17日

仙 台 弁 護 士 会

会長  岩渕 健彦

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