通信傍受法・組織犯罪対策法に関する声明
平成10年3月に国会に提出されていた「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案」、「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」及び「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案」の3法案について、通信傍受の対象犯罪を絞る修正を加えて衆議院で可決される方向で調整が進んでいる。
同法案の主な内容は、組織的な犯罪への刑の加重、犯罪収益等による事業経営の支配を目的とする行為等の処罰及び犯罪捜査のための通信傍受の許容であるが、組織的な犯罪への刑の加重及び犯罪収益等による事業経営の支配を目的とする行為等の処罰は、現行法の法定刑でもその犯罪態様によっては重く処断することが十分に可能である等立法を必要とするまでの事実が存在しないこと、「組織」「不正権益」「支配」等の構成要件が不明確であること、犯罪収益とされる前提犯罪が広すぎる等処罰範囲が広すぎること等の問題点を有しており、犯罪捜査のための通信傍受(いわゆる盗聴)は、憲法が保障する通信の秘密を侵害するものである。
特に盗聴については、仮に今回盗聴の対象となる犯罪を絞るような修正が加えられたとしても、未だ発生していない将来の犯罪も対象にしていること、別件盗聴も許容していること、盗聴期間につき再延長・再発布を認めていること等の問題点が多く、その性質上いかに要件を厳格にしても憲法の定める令状主義、適正手続の保障等を満たすことが困難と思われるとともに、警察が違法な盗聴を行った事件の存在等を考えると、プライバシーの侵害等の深刻な人権侵害を大量に生じさせる危険があり、その立法には断固反対せざるを得ない。
そこで、前記の3法案に反対であることを再度広く訴えるため、本声明を発するものである。