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平成11年5月20日会長声明

1999年05月20日

安藤・斎藤弁護士接見妨害 国賠訴訟最高裁判決に対する声明

 平成11年3月24日、最高裁大法廷は、安藤・斎藤両弁護士の接見妨害国賠訴訟において、刑事訴訟法39条3項は、憲法34条、37条3項、38条1項のいずれにも違反しない旨の判決を言い渡した。

しかしながら、本判決は、刑事訴訟法39条3項の規定がもたらした接見妨害の実情を直視せず、接見交通権の確立を阻害するものであって、著しく不当である。

そもそも身体の拘束を受けている被告人・被疑者と弁護人または弁護人となろうとする者が自由に接見できる権利は前記憲法諸規定から導かれる刑事手続上最も重要な基本的人権のひとつであり、刑事訴訟法39条1項は、これらの権利を受けて弁護人と被疑者・被告人との接見交通権を規定しているものである。

しかし、接見交通権は、その立法当初より刑事訴訟法39条3項を名目とする捜査当局の執拗な接見妨害により形骸化され、その結果、多くのえん罪事件や人権侵害事件等が生み出されてきた。

 これに対して、弁護士会は総力をあげて目由な接見交通権の確保のために闘い、いわゆる一般的指定制度の改廃を実現させるなど一定の成果を勝ち取ってきた。

また、全国各地で起こされた接見妨害国賠訴訟において、検察官の行った接見指定を違法とする下級審判決が相次いで出され、最高裁も昭和53年7月10日の判決(いわゆる杉山事件判決)において、接見交通権が被疑者らの憲法上の権利に由来する重要な権利であり、原則としていつでも接見の機会を与えなければならない旨明言したうえ、刑事訴訟法39条3項に規定される「捜査のため必要があるとき」とは、現に被疑者を取調中であるなど捜査の中断による支障が顕著な場合をいうとして、捜査機関の指定による制限を必要止むを得ない例外的な措置である旨判示した。

 ところが、なおも各地で捜査機関による接見妨害が相次ぐ中で、最高裁は平成3年5月10日の判決(いわゆる浅井事件判決)において、接見指定要件を緩和させるかの如き判断を示し、その結果、その後になされた接見妨害国賠訴訟の下級審判決の後退がもたらされることとなり、本判決の原審である仙台高裁第3民事部も、平成5年4月14日の判決において、安藤・斎藤両弁護士に対してなされた捜査機関による接見制限を適法である旨不当な判断を示すにいたった。 このような司法判断の後退に対し、国賠訴訟弁護団は接見交通権の確立を期すためには刑事訴訟法39条3項の違憲性を真正面から指摘することが必要との認識に立ち、最高裁に対し同条項の違憲判断を強く求め、日弁連もこれを支援してきた。

 また、国際人権法においては、いついかなるときでも、被疑者は弁護人の援助を受ける権利があることを認めており、おりしも国際人権規約委員会は、平成10年11月、日本政府の報告書に対する最終見解を発表し、刑事訴訟法39条3項のもとで弁護人へのアクセスが厳しく制限されている点を指摘し、規約に適合するように日本の起訴前勾留制度を直ちに改革するよう日本政府に強く勧告している。

 最高裁は、このような情勢の中で刑事訴訟法39条3項の違憲性を明確にすることを強く求められていたものであるが、本判決は、浅井事件判決の接見指定要件の解釈を維持したうえで、同条項は憲法に違反しない旨の判断を示したものである。

 これは接見交通権の確立を求める理論と運動に逆行するものであり、極めて問題である。

 当会としては、本判決を厳しく批判するとともに、今後とも接見交通権の確立のため粘り強い運動を続けていく決意を表明する。

 

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