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平成10年5月会長声明

1998年05月22日

1 政府は本年4月10日、「公務文書」の文書提出命令に関する「民事訴訟法の一部を改正する法律案」を国会に上程した。

 

2 平成8年、第136回国会に上程された民事訴訟法改正案の政府原案では、「公務秘密文書」について監督官庁が承認しなければ一律文書提出義務がなく、又裁判所に提出拒否事由の存否に関する判断権がない等、不合理な官民格差を生じ、各界から批判が集中した。

その結果、上記政府原案は修正削除されたうえ、衆参各法務委員会の付帯決議及び新民事訴訟法付則27条によって、情報公開制度の検討と並行して総合的な検討を加え、新民事訴訟法公布後2年を目処として必要な措置を講ずるものとされた。

 

3 しかし、今回提出された改正案は上記付帯決議及び附則の要求を十分に満たしておらず不当なものである。即ち、

 ① 「公務秘密文書」の定義があまりにも広く概括的であり、その結果「公務文書」の提出範囲が狭められる恐れがある。

 ② 刑事事件記録及び少年保護事件記録を文書提出義務の対象から除外しており、これらの文書が例えば交通事故による損害賠償訴訟等の民事訴訟及び官官接待や贈収賄等に端を発する住民訴訟等の行政訴訟における立証資料として果たしている重要性を無視するものである。

 ③ 「公務秘密文書」のうち、特に「防衛・外交文書」及び「犯罪・捜査文書」に関し、監督官庁が提出義務がないとの意見を述べたときは、裁判所は提出義務の存否ではなく当該監督官庁の上記意見の相当性について審査するものと しており、インカメラ手続に基く裁判所の判断を経ずに提出義務の存否を判断する場合が多くなることが予想され、その実質的判断権が監督官庁に委ねられる危険性がある。

 ④ 本年3月27日に国会提出された情報公開法案との関係では、本改正案においては「公務文書」についても自己使用文書であることが提出義務の除外事由とされているので、情報公開法案における非公開事由よりも提出拒否事由の範囲が広くなっていること、又情報公開法案では非開示事由の立証責任が官庁にあるのに対し、本改正案では提出拒否事由がないことの立証責任を申立人に課したものと解釈される余地があることにおいて整合性を欠く。

 

4 当会は、上記のような問題を含む本改正案には反対であり、国会の審議において、上記附帯決議及び附則の趣旨に基づいた修正がなされるべきであり、その為に全力を尽くす決意である。

 

以上、常議員会の決議に基き声明する。

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