平成10年3月13日、政府は、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案」、「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」及び「犯罪捜査の為の通信傍受に関する法律案」の3法案を国会に提案した。
同法案の主な内容は、組織的な犯罪への刑の加重、犯罪収益等による事業経営の支配を目的とする行為等の処罰及び犯罪捜査のための通信傍受の許容である。
しかし、組織的な犯罪への刑の加重及び犯罪収益等による事業経営の支配を目的とする行為等の処罰は、現行法でもその犯罪態様に応じた処断が十分に可能であり、新たな立法を必要とするまでの事実が存在しない。
加えて「組織」「不正権益」「支配」等の構成要件が不明確であり、犯罪収益とされる前提犯罪が広すぎる等全体として処罰範囲が広すぎること等の問題点を有している。
特に、犯罪捜査のための通信傍受(いわゆる盗聴)については、対象犯罪が広すぎること、将来の犯罪も対象にしていること、別件盗聴も許容していること、盗聴許容期間につき再延長を認めるばかりでなく令状の再発布をも認めている等の問題点が多い。
問題点のいくつかについては国会の審議の中での要件の厳格化等の修正も示唆されてはいるものの、その性質上いかに要件を厳格にしても憲法の定める令状主義、適正手続の保障の要請を満たすことが困難である。
のみならず、警察が違法な盗聴を行った事件が存在したことを考えると、通信の秘密の侵害、プライバシ−の侵害等の深刻な人権侵害を大量に生じさせる危険があり、その立法には断固反対せざるを得ないものである。
そこで、前記3法案に反対であることを広く訴えるため、本声明を発するものである。