9月11日,平成30年司法試験の最終合格者1525人が発表された。
司法試験の最終合格者数は,平成28年度が1583人(受験者数6899人),平成29年度が1543人(受験者数5967人),本年度が1525人(受験者数5238人)で,合格率は平成28年度が22.95%,平成29年度が25.86%,本年度が29.11%である。昨年度との対比で受験者数が約12%減少しながら,最終合格者数はほとんど変わりがない。このような結果は,政府の法曹養成制度改革推進会議が2015年(平成27年)6月30日付け「法曹養成制度改革の更なる推進について」と題する取りまとめにおいて,司法試験合格者数について「当面」「年間1500人程度は輩出される」ことを「目指すべきである」としたことを最優先したものであり,今後は司法試験合格者数が1500人程度で固定され,さらなる減員が進められない可能性が大きいといわざるを得ない。受験者数が減少しているにもかかわらず「1500人」を確保することが最優先されるのでは,司法試験が持っている選抜機能が働かなくなってしまうおそれがあり,「輩出される法曹の質の確保」という上記とりまとめの留意事項に反することにもなる。
当会は,2015年(平成27年)2月21日開催の定期総会において,政府に対し,司法試験合格者数を直ちに年間1500人程度まで減員することを強く求めた上で,司法試験合格者数が年間1500人程度で固定されるならば,法的需要に見合わない弁護士人口の増加が続くことになり,司法修習修了者の就職難が一層深刻化し,数多くのOJT不足の弁護士が生ずると懸念される状況の改善が期待できないことから,さらなる減員を進め,司法試験合格者数を年間1000人程度とするよう求める「適正な司法試験合格者数への減員を求める決議」を行った。
長年にわたり裁判官及び検察官の採用人数が抑制されている現状では,司法試験合格者の大多数は,弁護士登録を申請することとなる。弁護士数は2007年(平成19年)3月31日時点では2万3119人であったものが,2017年(平成29年)3月31日時点では3万8980人,本年9月1日時点では3万9983人となっており,依然として弁護士増加のペースが急激であることに変わりはない。日弁連のシミュレーションによれば,年間司法試験合格者1500人を維持していくと,弁護士数は2061年には5万7265人(現在の1.43倍)になると予想されている。
その一方で,社会の法的需要を一定程度反映していると見られる裁判所の全新受事件の数は,減少傾向が続いている。弁護士数は,2006年(平成18年)3月31日時点で2万2021人,2016年(平成28年)3月31日時点で3万7680人であり,11年間で1.7倍となっているが,他方,全新受事件の数は,次のとおり2016年(平成28年)においては2006年(平成18年)よりも約30%も減少しており,今後も増加傾向に転じる見込みは乏しい状況にある。したがって,法的需要に対する弁護士の供給過多は依然として是正されていない状況にあるといわなければならない。
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全事件 |
民事・行政事件 |
刑事事件等 |
家事事件 |
少年事件 |
平成18年 |
約507万 |
約262万件 |
約149万件 |
約74万件 |
約21万件 |
平成28年 |
約357万件(30%減) |
約147万件(44%減) |
約99万件(34%減) |
約102万件(37%増) |
約8万件 (62%減) |
そこで,当会は引き続き政府に対し,上記2015年度(平成27年度)定期総会決議を踏まえ,今後の司法試験合格者数についてさらなる減員を進め,年間1000人程度とするよう強く求める。
2018年(平成30年)9月19日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 及 川 雄 介