弁護士会ホーム > 東京高検黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定の撤回を改めて求めるとともに,国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明

東京高検黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定の撤回を改めて求めるとともに,国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明

2020年04月28日


政府は,本年1月31日の閣議において,2月7日付で定年退官する予定だった東京高検検察庁検事長について,それまでの政府解釈を変更し,国家公務員法(以下「国公法」という。)81条の3第1項を根拠に,その勤務を6か月(8月7日まで)延長する決定を行った(以下「本件閣議決定」という。)。

しかし,検察官の定年は特別法である検察庁法によって定められている。さらに,昭和56年,国家公務員に定年制や定年延長制を導入するため国公法81条の2,同条の3が新設されたが,その際に国会で示された立法者意思,従前の政府見解,国公法の条文構造からして,国公法第81条の3第1項が,検察官には適用されないことは明らかである。
検察官は,強大な捜査権を有し,起訴権限を独占する立場にあって,準司法的作用を担っており,犯罪の嫌疑があれば政治家をも,時に総理大臣でさえ捜査の対象とすることから,厳正公平,不偏不党でなければならない。上記検察庁法と国公法の規定と解釈は,検察官の人事に対する政治の恣意的な介入を排除し,検察官の独立性を確保するためのものであり,憲法の基本原理である権力分立から要請されている。
したがって,国公法の解釈変更による本件閣議決定は,解釈の限界を逸脱するものであって許されない。
そこで,当会は,本年3月12日,本件閣議決定を直ちに撤回することを求める会長声明を発出した。

しかし,政府は,その後も本件閣議決定を撤回しないばかりか,本年3月13日,検察庁法改正案を含む国公法等の一部を改正する法律案を通常国会に提出した。この検察庁法改正案は,全ての検察官の定年を現行の63歳から65歳に引き上げた上で,63歳の段階でいわゆる役職定年制が適用されるというものである。そして,内閣又は法務大臣が「職務の遂行上の特別の事情を勘案し」「公務の運営に著しい支障が生じる」と認めるときは,役職定年を超えて,あるいは定年さえも超えて当該官職で勤務させることができるようにしている(検察庁改正法案第9条3項ないし第5項,第10条第2項,第22条第1項,第2項,第4項ないし第7項)。

この改正案によれば,本件閣議決定のような検察官人事への政治の恣意的な介入が可能となり,準司法官として職務と責任の特殊性を有する検察官に強く求められる政治的中立性や独立性が脅かされる危険性があまりにも大きく,憲法の基本原理である権力分立に反する。この改正案が運用されれば,検察権行使が歪められ,政治家への追及がなおざりになるおそれが生じ,厳正,公平,不偏不党を旨とする検察に対する国民の信頼が根底から失われることにつながる。

よって,当会は,違法な本件閣議決定の撤回を改めて求めるとともに,国家公務員法等の一部を改正する法律案中の検察官の定年ないし勤務延長に係る特例措置の部分に強く反対するものである。

2020年(令和2年)4月28日

仙 台 弁 護 士 会

会 長 十 河   弘

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