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新型コロナウイルス感染症の影響を受けた法人の債務問題についての提言書

2020年05月21日

仙 台 弁 護 士 会

会 長 十 河   弘

第1 提言の趣旨
新型コロナウイルス感染症の影響により既往債務の弁済が困難となるおそれがある法人の事業の継続・再建支援策の一環として,下記のとおり提言する。

1 債権買取等により法人の事業継続・再建を支援する機構を設立すること。 
2 1に加え,主として小規模法人向けの簡易・迅速な債務減免スキームとして,自然災害債務整理ガイドラインに準じた債務整理ガイドラインを策定すること。
 
第2 提言の理由
 1 新型コロナウイルス感染症による深刻な影響
  ⑴ 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以下「コロナ感染症」という)の世界的大流行が発生し,世界各地で多数の感染者,死者の発生が続き,極めて深刻な事態となっている。我が国においても,感染の拡大により多数の感染者,死者が発生し,その終息の見通しがつかない状態にある。
  ⑵ 国は,これを受けて,新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき,全国47都道府県に緊急事態宣言を発令し,国及び地方自治体は,コロナ感染症の拡大防止を目的として,広く国民に対し,不要不急の外出や,人が集まっての飲食やイベント等について自粛することなどを要請している。
そのため,事業者は,その経済活動を自粛・制限せざるを得ない状態に追い込まれ,極めて広範な業種において急激な売上の減少等が生じ,中には倒産に至る事業者も発生している。コロナ感染症の経済への影響はリーマンショックを超えるとされ,我が国の多数の事業者の経営上の重大な危機に直面していて,経済への深刻な影響が生じている。
2 コロナ感染症に対する法人の債務問題への対応の必要性
 ⑴ 以上のような状況のもと,コロナ感染症の影響により事業基盤等が毀損した法人の事業の継続・再建を図るための方策をとることは喫緊の課題である。
そこで,コロナ感染症の影響を受けた法人について,不利益を受けることなく弁済猶予・条件変更を受けられる制度の構築,事業の継続・再建のためのさらなる給付制度の創設等,まずはその事業継続が困難になることをできる限り防止するための支援策が速やかに講じられるべきである。
 ⑵ しかしながら,これらの支援策が講じられとしても,コロナ感染症の甚大な影響に鑑みれば,既往債務の減免等の抜本的な支援が行われない限り,事業の継続・再建が困難となる法人が多数生じることは避けられないと考えられる。現在でも,すでに事業の継続が困難となりつつある法人が多数生じていることに鑑みれば,法人の事業の継続・再建を支援するために,既往債務の減免を可能とする制度を速やかに整備することが必要である。
 3 検討されるべき法人の債務問題対応のための制度
⑴ 債権買取機構の設立 
 コロナ感染症の影響により,既往債務が収益力に比して過大となっている法人の事業の継続・再建を実効的に支援する仕組みとして,東日本大震災時における東日本大震災事業者再生支援機構等の例も踏まえ,金融機関等の債権の買取等により法人の債務負担を軽減しつつその事業の継続・再建を支援する機構(以下「債権買取機構」という)が設立されるべきである。
債権買取機構は,概要,以下の特徴を有するものとされるべきである。
ア 対象債務者は,コロナ感染症の影響により既往債務が収益力に比して過大となっている法人が想定されるが,その要件該当性の判断はできる限り柔軟に解釈・運用する旨の指針を定める等の措置が講じられるべきである。
イ 債権買取機構の業務内容としては,以下のものが含まれるべきである。
①債権買取等による債務負担軽減とそれに向けての債権者調整
②再生計画策定支援
③新規融資の調整,債務保証,つなぎ融資の実施
④各種支援制度利用の助言・支援
   ウ 相談窓口を全国多数の箇所に設置するとともに,できる限り簡易・迅速な手続で支援決定を可能とする措置が講じられるべきである。
   エ 対象債務者に帰責性がないことに鑑み,経営者責任や株主責任は問われないものとされるべきである。
⑵ 小規模法人向け債務整理ガイドラインの策定
 個人事業主と実態として大きな差がない小規模法人については,債権買取機構による支援よりも,個人事業主を含む個人の被災者向け制度である自然災害ガイドラインのようなスキームの方が,より簡易迅速に債務減免が可能となる場合もある。
そこで,債権買取機構の設立に加え,主として小規模法人向けの簡易・迅速な債務減免スキームとして,自然災害ガイドラインに準じた債務整理ガイドラインが策定されるべきである。
当該ガイドラインは,概要,以下の特徴を有するものとされるべきである。
ア 対象債務者は,コロナ感染症の影響により既往債務の返済が困難となるおそれがある法人が想定されるが,その要件該当性の判断はできるだけ柔軟に解釈・運用する旨の指針を定める等の措置を講じられるべきである。
イ 自然災害ガイドラインに準じ,無料で弁護士や税理士,公認会計士等の専門家の支援が受けられること,原則として経営者以外の保証人に対する保証履行は求めないこと等の内容が含まれるべきである。
ウ 手続については,原則として自然災害ガイドラインに準じるものとしつつ,登録支援専門家の委嘱は,主たる債権者の着手同意がない場合においても弁護士会の委嘱依頼がなされた場合には可能とする等,より債務者の負担が軽減される方策がとられるべきである。
エ 事業の継続・再建に支障が生じないよう,事業継続に不可欠な事業用動産については弁済原資から除外する等の取り扱いが講じられるべきである。
オ 対象債務者に帰責性がないことに鑑み,経営者責任や株主責任は問われないものとされるべきである。
4 結語
コロナ感染症の影響は日々深刻化し,すでに多数の法人が事業の継続が困難となりつつあり,早急な対策が必要とされる状況となっている。
よって,コロナ感染症の影響を受けた法人の事業の継続・再建を支援する方策の一環として,提言の趣旨記載の支援策を速やかに実行することを提言するものである。 

以 上

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