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「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」に対する会長声明

2020年11月20日

 2020年6月19日、法務大臣の私的諮問機関である第7次出入国管理政策懇談会「収容・送還に関する専門部会」(以下「専門部会」という。)は、報告書「送還忌避・長期収容の解決に向けた提言」(以下「本提言」という。)を公表した。現在、出入国在留管理庁において、本提言を踏まえた出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)の改正が検討されている。
 しかし、当会は、本提言のうち、(1)退去強制拒否罪の創設(2)送還停止効の例外の創設(3)仮放免逃亡罪の創設について、以下の理由から強く反対するものである。

1 退去強制拒否罪の創設について
  専門部会は、退去強制令書の発付後も日本から退去しない者に対し、①出国に必要な文書の取得を命じる制度や、②一定の期日までに退去することを命じる制度を創設し、これらの命令に基づく義務の履行を確保するため、命令違反に罰則(以下「退去強制拒否罪」という。)を定めることを検討するよう提言している。
  しかし、退去強制令書の発付を受けたが、送還に応じることができない者の中には、日本で生まれ育ったため、あるいは日本に居住する家族を有するため、在留特別許可を求める者や、また、難民の地位に関する条約上の難民であるにも関わらず、難民認定されないため、やむを得ず難民申請を複数回行っている者等、様々な事情を抱えている者がいる。上記人々らは、未だ司法審査を受けておらず、本来保護されるべき者であるが、退去強制拒否罪の創設は、このような本来保護されるべき者が不当に刑罰の対象となってしまう危険性を孕むものである。このことは、本提言の中でも示されているように、出入国在留管理関係訴訟(退去強制手続関係取消請求・無効確認、難民認定手続関係取消請求・無効確認等)で国の敗訴が確定した判決が、平成28年以降の3年間で合計26件と相当数存在するという事実からも裏付けられる。そして、当該事実は、罰則の創設により、退去強制令書を発付された者の裁判を受ける権利(憲法32条)が侵害されかねないことも示している。
更には、退去強制拒否罪が創設されれば、上記のような様々な事情のある人々を人道上の観点から支援するNGO等の関係者や上記人々から相談や依頼を受ける弁護士、行政書士等の専門家が共犯とされ、刑罰の対象となる可能性も否定できず、ひいては、これらの者による人道的な行為や権利擁護活動までをも著しく萎縮させるおそれがある。

2 送還停止効に例外を設けることについて
  出入国管理及び難民認定法第61条の2の6第3項に規定する、難民申請中の者の送還を停止する効力に関し、専門部会は、「送還停止効に一定の例外を設けること。例えば、従前の難民不認定処分の基礎とされた判断に影響を及ぼすような事情のない再度の難民認定申請者について、速やかな送還を可能とするような方策を検討すること」を提言している。
  しかし、日本は、諸外国に比べて難民認定率が極端に低く、日本で不認定になった者と同じ状況にある者が他国で難民認定を受けるという例や、難民認定されないため、やむを得ず複数回申請し、ようやく認定されるという例も相当数ある。以上に鑑みると、現在日本で行われている難民認定手続が適切に実施されているとは、到底評価できない。
  上記のような状況であるにもかかわらず、複数回申請であることなどを理由として安易に送還停止効の例外を認めることは、誰一人として迫害を受けるおそれのある領域に送還してはならないという「ノン・ルフールマンの原則」(難民条約第33条1項)に抵触する可能性が極めて高い。
  立法府がまず行うべきは、難民条約上の保護が認められるべき者が適切に保護される制度を構築することであり、難民として保護を求める者を安易に送還する制度を構築することではない。

3 仮放免逃亡罪の創設について
  専門部会は、仮放免された者が定められた条件に違反して、逃亡し、又は正当な理由なく出頭しない行為に対する罰則(仮放免逃亡罪)の創設を検討する旨提言している。
  しかし、仮放免は、逃亡防止・出頭確保のため、身元保証人を付し、一定額の保証金を納付させることが通例であり、保証金の没取に加えて刑罰を科すことは、二重に刑罰を科すことに等しい。また、仮放免制度と同様に、身体拘束を解く刑事訴訟法の保釈制度にあっても、権利保釈が認められ、保釈逃亡罪も存在していないことを考えれば、入管当局の裁量に依存する仮放免制度に刑事罰を導入することは、厳に慎重であるべきである。
そもそも、国は、退去強制事由に該当すると思料されるものについては、全件収容をして退去強制手続を進めるといういわゆる全件収容主義に基づく運用を行っている。このような全件収容主義が改められ、収容が最終的な手段になれば、逃亡や不出頭は極めて限定的になるはずであり、そうした法整備をしない状態で罰則を創設すべきではない。
さらに、被仮放免者が逃亡した場合には、仮放免申請手続や仮放免後の生活の支援をしていた者が共犯として刑事処罰の対象となるおそれが否定できず、ひいては、1と同様に人道行為や権利擁護活動までも著しく萎縮させるおそれがある。

4 まとめ
  以上から、当会は、本提言のうち、(1)退去強制拒否罪の創設(2)送還停止効に例外を設けること(3)仮放免逃亡罪の創設について強く反対する。

2020年(令和2年)11月20日

仙 台 弁 護 士 会

 会 長 十 河  弘

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