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女川原子力発電所2号機の再稼働に反対し,あらためて原子力発電からの撤退を求める会長声明

2020年11月20日

1 宮城県議会は,2020年10月22日,東北電力女川原子力発電所(以下「女川原発」という。)2号機の早期再稼働を求める請願を賛成多数で採択した。これを受けて,宮城県知事は,同年11月11日,石巻市長及び女川町長と協議した上で再稼働の前提となるいわゆる「地元同意」を表明し,同月18日経済産業大臣に対し「地元同意」を伝達した。今後女川原発2号機の再稼働に向けた動きが加速することが予想される。
2 しかしながら,原子力発電所は,人の生命・身体に対して重大な侵害の危険を及ぼす核燃料物質を大量に利用する発電システムであり,ひとたび重大事故が起きれば時間的・空間的に人知を越える甚大な被害を与え,居住移転の自由(憲法22条1項),財産権(憲法29条),そして平和的生存権(憲法前文,13条,25条)を侵害し,個人の尊厳(憲法13条)に反する最大級の人権侵害を惹き起こすことになる。実際に東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故による未曾有の被害を経験した国民・県民は,このような認識を広く共有している。
3 当会は,上記のように原子力発電所が重大な人権侵害を惹起する危険性のある施設であることに鑑み,2012年2月25日,「原子力発電所からの撤退を求める決議」(以下「2012年決議」という。)を採択した。2012年決議では,国及び原子力発電所等原子力関連施設を有する発電事業者に対して,
⑴ 原子力発電所の新増設(計画中・建設中のものも全て含む。)を止めること。
⑵ 既設の原子力発電所のうち①福島第一及び第二原子力発電所,②敷地付近に活断層が存在したり大規模地震が周期的に発生している地域にあるもの,③運転開始後30年を経過したものは直ちに廃止すること。
⑶ 上記以外の原子力発電所は,10年以内のできるだけ早い時期に全てを廃止すること。廃止するまでの間は,安全基準について国民的議論を尽くし,その安全基準に適合しない限り運転(停止中の原子力発電所の再稼働を含む)しないこと。
⑷ 今後のエネルギー政策は,再生可能エネルギーの推進,省エネルギー及びエネルギー利用の効率化を政策の中核とすること。
を求めた。
現在,2012年決議から8年9か月が経過したが,当会としては,依然として,あと1年3か月の間に女川原発を含めた国内全ての原子力発電所を廃止し,再生エネルギー等へのエネルギー転換を図るべきものと考える。実際に,現在国内で稼働している原子力発電所は九州電力の玄海原子力発電所4号機の1基のみであるが,全国の電力供給に特段の問題は生じておらず,このようなエネルギー転換も十分実現可能である。
4 女川原発については,「男鹿半島-牡鹿半島構造帯」という東北地方有数の地震地帯に位置し,2008年の岩手・宮城内陸地震をはじめ過去に度々地震の被害を受けており,2012年決議の⑵②に該当するものとして,当会は,直ちに廃止することを求めていた。これに加えて,女川原発は,周期的な大地震の震源地である三陸沖に臨む立地であり,東日本大震災においても被災したこと,女川原発2号機は,運転を開始して25年を経過しており老朽化の入口に差しかかっていること等原子力発電所の設備そのものの安全性に関する問題を抱えており,さらに近時は,女川原発にかかる重大事故を想定した広域避難計画の実効性についても大きな疑問が投げかけられている。
  女川原発2号機については,原子力規制委員会の新規制基準適合性審査を経て,2020年2月26日,同委員会により原子炉設置変更許可がなされてはいる。しかし,この新規制基準は,同委員会自体が,この基準を満たすことによっても絶対的な安全性が確保されるわけではないものとも説明しており,なお重大事故の発生の可能性があることは否定できない。
5 女川原発2号機の再稼働については,宮城県議会9月定例会の審議を経たものの,県民の声を直接集約する住民投票等の手続を経たわけでもなく,現状では,多くの県民が抱く女川原発2号機の安全性に対する不安が完全に解消されたとは言い難い。
エネルギー基本計画においては,原子力発電所の再稼働にあたって,その安全性に対する国民の懸念の解消に全力を挙げることを前提とすべきこととされている。それにもかかわらず,住民の不安が解消されているとは言い難い状況のもと,宮城県知事及び女川原発の立地自治体が女川原発2号機の再稼働を容認し,同意を表明したことについて,当会は遺憾の意を表さざるを得ない。
6 宮城県は,福島第一原子力発電所の立地県に隣接し,同原発事故による放射性物質の拡散により広範かつ多くの県民が多大な被害を被った。そればかりか,県内には同原発事故により故郷を離れることを余儀なくされた多くの避難者が現在も生活しており,県民の多くが未だに同原発事故からの復興の最中にある。同原発事故で私たちが得た教訓は,いかなる原子力発電所も重大な事故を発生させる可能性があり,いったん事故が発生すれば,立地自治体の住民に限らず,多くの人々の暮らしに取り返しのつかない多大な損失を与えるということである。
  そこで当会は,原発事故が甚大な人権侵害をもたらすことに鑑み,東北電力が女川原発2号機を再稼働することに反対するとともに,あらためて,国及び原子力発電所等原子力関連施設を有する発電事業者に対し,原子力発電政策からの撤退を求める。

2020年(令和2年)11月20日

仙 台 弁 護 士 会

 会 長 十 河  弘

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