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宮城県の最低賃金額の引上げと中小零細企業への実効的な支援等を求める会長声明

2021年07月29日

1 昨年度の状況
(1)昨年、中央最低賃金審議会は、2020年度の地域別最低賃金額の引上げ額について目安額の提示を見送った。これを受けて、各地の審議会も引上げ額を抑制しており、宮城県の最低賃金額は2020年10月1日から時間額825円(1円増)とされるにとどまっている。
 しかし、時給825円という水準は、1日8時間、週40時間働いたとしても月収が約15万円に届かず、年間で見てもいわゆる「ワーキングプア」といわれる年収200万円を大きく割り込むものとなる。この金額では労働者が賃金だけで自らの生活を維持していくことは困難である。
(2)この「見送り」の根拠は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う影響から、経営基盤が脆弱な多くの中小零細企業が倒産、廃業に追い込まれる懸念が広がる中、最低賃金の引上げが企業経営に与える影響を重視して引上げを抑制すべきということにあった。
しかしながら、上記のとおり、そもそも見送り前の最低賃金額は生活維持に十分な水準ではなかった。最低賃金の引上げは、消費需要を喚起し経済を活性化する効果を有するものでもあり、新型コロナウイルス感染症に向き合いながら経済を活性化させるためにも、引上げの流れを後退させるべきではない。コロナ禍にあっても、2021年にフランス、ドイツ、イギリス等多くの国で、最低賃金が引き上げられている。
(3)最低賃金の引上げは、正規労働者・非正規労働者の中に広がる低賃金と、それによって広がり続ける格差の解消にとって重要かつ有効な施策でもある。さらに最低賃金の引き上げは、離職率の減少につながり、企業の新規採用や訓練へのコストを減らし、生産性の向上につながるだけでなく、賃金が消費に回り、地域的及び全国的に経済循環を活発にする効果が期待される。
また、最低賃金は都市部と地方とでは金額に格差があることも問題である。現在、低い金額に設定されている地方の最低賃金の大幅な引上げを、地域の活性化と連動した形で行うことにより、地方から中央への人口の流出を防ぎ、地域格差の解消にも有効策となることも期待できる。
(4)最低賃金の大幅引上げは、他方で、中小零細企業の経営を圧迫するおそれがある。特に新型コロナウイルス感染拡大が拡大している現状においては、中小零細企業への配慮がより必要となっている。
そこで、最低賃金の引上げを行う場合は、そのスケジュールを明確にするともに、賃金を引き上げた中小零細企業への社会保険料の減免措置や補助金給付制度等の政策も検討すべきである。その他、中小零細企業への支援策を積極的に講じることによって、最低賃金引き上げに対応できる経営基盤の確立を後押しすることが政府には求められる。

2 最低賃金額の大幅な引き上げについて
(1)中央最低賃金審議会は2021年(令和3年)7月16日、最低賃金の引き上げ額の目安を全ての都道府県について28円として答申した。この金額は、2002年(平成14年)以降に、最低賃金が時給で示されるようになって以降、最も高いものである。また、引き上げ額が一律となったことで、都道府県間の最低賃金額の格差の拡大が抑えられたことも評価できる。しかし、前項で述べたとおり、昨年における宮城県の最低賃金額は1円増にとどまったこと及び最低賃金の引上げは様々な格差の解消にとって重要かつ有効な施策であることからすれば、中央最低審議会の答申ではまだ不十分といえる。
(2)そこで、当会は、宮城地方最低賃金審議会に対し、中央最低賃金審議会の目安を踏まえて、宮城県の最低賃金額を、825円から28円以上大幅に引き上げる答申を行うよう求めるとともに、新型コロナウイルス感染拡大に伴い中小零細企業の経営状況が極めて悪化していることから、国及び宮城県に対しては、社会保険料の事業者負担部分の大幅な減免や補助金の速やかな交付など、中小零細企業への実効的な支援等を求めるものである。

2021年(令和3年)7月29日

仙 台 弁 護 士 会

会 長  鈴  木   覚

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