民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げる「民法の一部を改正する法律」(平成30年法律59号。以下,「本改正法」という。)が2018年(平成30年)6月に成立し,施行日である2022年(令和4年)4月1日がまもなく到来する。
成年年齢の引下げにより,高校生を含む18歳及び19歳の若年者が未成年取消権(民法5条2項)を行使できなくなることから,同年齢の若年者を狙った悪質商法が増加することへの強い懸念が示されており,当会も,2015年(平成27年)8月27日に民法の成年年齢引下げに反対する会長声明を,2018年(平成30年)5月17日に拙速な民法の成年年齢引下げに反対する会長声明を発出し,若年者への消費者被害防止策の周知徹底が実践されない中での成年年齢引下げに反対する意見を表明してきた。
本改正法は,2018年(平成30年)6月に成立したが,参議院法務委員会において全会一致で附帯決議がなされ,本法律の施行にあたり,①若年者の消費者被害の拡大防止のために,知識,経験,判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して勧誘し契約を締結させた場合における消費者の取消権(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)を創設すること(法成立後2年以内),②若年者の消費者被害を防止し救済を図るために必要な法整備を行うこと(法成立後2年以内),③マルチ商法等への対策について検討し,必要な措置を講じること,④消費者教育を質・量共に充実させることなどが求められていた。
しかし,本法律が成立してから3年以上が経過し,本法律の施行が間近に迫る現時点において,いずれの施策もいまだ不十分であると言わざるを得ない。特に,若年者の消費者被害の防止に不可欠なつけ込み型不当勧誘取消権の創設(上記①)は,施行日までに実現できる目途が立っていない。また,当会においても,成年年齢引下げ問題に関する出前授業を各高等学校等で実施してきたが,消費者被害に対する若年者の認識や理解が十分に行き渡っていないという学校現場の声を数多く耳にしており,若年者を対象とした消費者教育が,質・量共に十分とは言い難い状況にある。現状のまま本法律が施行されれば,若年者に対する消費者被害が拡大する危険性は極めて高い。
よって,当会は,国に対して,成年年齢引下げに伴う若年者の消費者被害拡大防止のため,つけ込み型不当勧誘取消権を創設し,消費者教育を質量共にさらに拡大強化する等,上記附帯決議に示されたような各施策を実効性のある形で速やかに実施すると共に,引き続き成年年齢の在り方を含めた若年者の消費者被害を防止するための法制度の創設を求める。
2022年(令和4年)2月10日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 鈴 木 覚