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消費者安全確保地域協議会の設置等を求める要請書

2022年01月13日

消費者安全確保地域協議会の設置等を求める要請書

令和4年1月13日

仙 台 弁 護 士 会

会 長   鈴  木   覚

第1 要請の趣旨
  貴市町村に対し,消費者被害の防止・救済のため,以下の事項を要請いたします。
1 消費者安全確保地域協議会(法定の見守りネットワーク)を設置すること。同協議会においては,構成員が対象者の個人情報を共有することが可能な運用を検討すること。
  同協議会設置運営にあたり,重層的支援体制整備事業を実施し,これを活用することも検討すること。
2 消費者安全確保地域協議会(法定の見守りネットワーク)を設置しない場合であっても,重層的支援体制整備事業として,福祉部局と消費者行政担当部局及び関係機関が連携し消費者被害の防止・救済のための体制(広い意味での「見守りネットワーク」)を構築すること。

第2 要請の理由
1 要請事項1について
(1)消費者安全確保地域協議会制度の目的
近年,高齢者の世帯構成において「単独世帯」や「夫婦のみの世帯」等の少人数の世帯構成の割合が増加していることから,高齢者の消費者被害を予防し,救済を図るためには,その高齢者が生活する地域においてネットワークを作り「見守り」を実施することが重要な課題となっています。このような課題に対応するため,消費者支援のための見守りのネットワークを推進する法的枠組として,2014年(平成26年)6月の消費者安全法の改正により,地方公共団体に「消費者安全確保地域協議会」(以下「地域協議会」という。)を設置することが可能となりました(同法第11条の3・条項は別紙のとおり)。改正法は,2016年(平成28年)4月より施行されています。
地域協議会は,地方公共団体の関係部署と地域の関係者が連携して高齢者等の見守り活動を行うことを目的としたものです。同協議会の構成員には個人情報保護法の例外(法令に基づく場合)が規定されており(同法11条の4),判断能力が十分でない等の事情から本人の同意が得られないような事案においても,個人情報を共有しながら実効性のある支援が可能な仕組みとなっています。
(2)地域協議会の設置状況と仙台弁護士会のシンポジウムの開催
しかし,2021年(令和3年)12月末時点で地域協議会を設置しているのは,全国1788の地方公共団体のうち363(約20%)にとどまっています。消費者安全法において設置が目標とされている人口5万人以上の市区においても,地域協議会が設置されているのは,全国540の地方公共団体のうち145(約27%)に過ぎません。また,地域協議会が設置されている市区においても,個人情報の提供や共有を行わない扱いのため本来の機能を有しない組織も少なくありません。
宮城県内においても,地域協議会が設置されているのは,仙台市と大崎市の2市にとどまっており,個人情報の共有が可能な運用がなされているのは大崎市のみです。
 以上のような現状を踏まえ,当会は,令和3年9月11日に,日本弁護士連合会第63回人権擁護大会(令和3年10月14日,15日に岡山市で開催)のプレシンポジウム(地域のネットワークで消費者被害を防ぐ-消費者安全確保地域協議会の設置を目指して-)を開催し,宮城県内の見守りのためのネットワーク設置に向けた課題を検討いたしました。
(3)地域協議会の有用性
 プレシンポジウム開催にあたり実施した宮城県内の市町村(消費者部局,福祉部局)を対象としたアンケート調査では,同協議会を未だ設置しない理由として,「協議会を設置しなくても,既に他機関との連携がある」(回答全体の63.2%),「既に消費者被害につき見守りを実施できている」(同36.8%)との回答が多く見られました(別添アンケート結果参照)。
見守り等に必要な取組は,地域協議会という形を用いなくても可能ですが,法定機関である地域協議会を設置することには以下のような大きなメリットがあり,消費者被害の未然防止に役立つとされています。
①他機関・団体との制度的な連携
 福祉行政担当部門・警察・地域包括支援センターその他の機関・団体との制度的な形での連携(組織の目的を自覚した継続的な取り組み)を確保することができる。
②個人情報の利用
前記のとおり,地域協議会とすることにより,個人情報保護法の例外とされます。
特に,本人の同意が得られない場合でも個人情報を扱える仕組みは問題解決にとって非常に有効であり,現に大崎市においては,このような仕組みにより,高齢者の自宅を訪れる不審な訪問者を察知し被害予防につなげるなど,多くの成果が報告されております(添付の日弁連人権擁護大会シンポジウムにおける大崎市の報告参照)。
(4)地域協議会設置の要請
本人同意を得るのが難しいような事案でも,個人情報が活用できれば,地方自治体内の消費者行政部署と福祉部署及び地方自治体の外部の関係機関等との間でより実効性のある連携を行うことが可能となることから,既に関係各所間の連携が図られている地方自治体においても,同協議会の設置はとても意義のあるものです。
 そこで,当会は,貴市町村に対し,要請の趣旨第1項のとおり,消費者安全確保地域協議会を設置すること,個人情報共有ができることが地域協議会の大きなメリットであることから,設置に当たっては構成員間で対象者の個人情報の共有を可能とする運用とすることを要請いたします。
(5)重層的支援体制整備事業との連携・同事業の活用
また,地域協議会設置にあたっては,現在,厚生労働省において,「地域共生社会」の実現に向け「重層的支援体制整備事業」が実施されているところ,同事業との連携・同事業の活用が考えられます。
同事業と地域協議会制度との連携については,令和3年10月1日付厚生労働省社会・援護局地域福祉課長,消費者庁地方協力課長連名の通知書「重層的支援体制整備事業と消費者安全確保地域協議会制度との連携について」においても,「地方自治体の民生主管部と消費者行政担当部局が積極的に連携し,消費者被害の防止に向けて取り組むこと。その際,同事業に消費者行政部局が関与し,見守りネットワーク(注:この書面では地域協議会のことを指している)としても一体として運用することにより,効率的・効果的かつ実効性のある取組とすること。」などが要請されています。
同通知書では,具体的な方法として,「重層的支援会議・支援会議については,その目的や内容に応じて,開催頻度や開催方法が決定されることとなるが,見守りネットワークの会合と組み合わせて開催することも可能である。」(3頁)とされているように,同事業における会議や組織を「法定の地域協議会」として位置づけるなどの方法を取ることにより,消費者行政担当部局が単独で設置するより手続的・財政的負担を軽減することも可能と考えられます。
同事業は,希望する自治体が行う事業ですが,これを実施することによって地域協議会の設置がしやすくなるものと考えられることから,貴市町村において積極的な応募をご検討願います。

2 要請事項2について
重層的支援体制整備事業においては,上記のとおり,同事業と地域協議会(法定のの見守りネットワーク)の一体的運用が望ましいとされていますが,地域協議会(法定の見守りネットワーク)を設置しなくても,同事業を実施する中で福祉部局と消費者行政担当部局及び関係機関が連携し,消費者被害の防止・救済のための体制(広い意味での「見守りネットワーク」)を作ることが可能となると考えられます。
そこで,貴市町村に対し,地域協議会(法定の見守りネットワーク)を設置しない場合であっても,消費者被害を防ぐ体制を,重層的支援体制整備事業として構築することについて検討いただきたく要請をいたします。

3 まとめ
地方公共団体の関係部署と地域の関係者が連携して高齢者等の見守り活動を行うことの重要性をふまえ,重層的支援体制整備事業を活用するなどにより消費者安全確保地域協議会(法定の見守りネットワーク)を設置すること,あるいは重層的支援体制整備事業として,福祉部局と消費者行政担当部局及び関係機関等が連携し消費者被害を防ぐ体制を構築することについて,ぜひ前向きに取り組んでいただきたく,要請いたします。

以 上


別 紙

 消費者安全法(抜粋)
 
(目的)
 第1条 この法律は,消費者の消費生活における被害を防止し,その安全を確保するため,内閣総理大臣による基本方針の策定について定めるとともに,都道府県及び市町村による消費生活相談等の事務の実施及び消費生活センターの設置,消費者事故等に関する情報の集約等,消費者安全調査委員会による消費者事故等の調査等の実施,消費者被害の発生又は拡大の防止のための措置その他の措置を講ずることにより,関係法律による措置と相まって,消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会の実現に寄与することを目的とする。

(消費者安全確保地域協議会)
第11条の3 国及び地方公共団体の機関であって,消費者の利益の擁護及び増進に関連する分野の
事務に従事するもの(以下この条において「関係機関」という。)は,当該地方公共団体の区域における消費者安全の確保のための取組を効果的かつ円滑に行うため,関係機関により構成される消費者安全確保地域協議会(以下「協議会」という。)を組織することができる。
2 前項の規定により協議会を組織する関係機関は,必要があると認めるときは,病院,教育機関,第十一条の七第一項の消費生活協力団体又は消費生活協力員その他の関係者を構成員として加えることができる。

(協議会の事務等)
第11条の4 協議会は,前条の目的を達成するため,必要な情報を交換するとともに,消費者安全の確保のための取組に関する協議を行うものとする。
 2 協議会の構成員(次項において単に「構成員」という。)は,前項の協議の結果に基づき,消費者安全の確保のため,消費生活上特に配慮を要する消費者と適当な接触を保ち,その状況を見守ることその他の必要な取組を行うものとする。
 3 協議会は,第一項に規定する情報の交換及び協議を行うため必要があると認めるとき,又は構成員が行う消費者安全の確保のための取組に関し他の構成員から要請があった場合その他の内閣府令で定める場合において必要があると認めるときは,構成員に対し,消費生活上特に配慮を要する消費者に関する情報の提供,意見の表明その他の必要な協力を求めることができる。
4 協議会の庶務は,協議会を構成する地方公共団体において処理する。

 
 

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