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平成18年5月18日会長声明

2006年05月18日

未決拘禁法案の修正等を求める会長声明

 本年4月14日,「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案」(いわゆる未決拘禁法案。以下、「本法案」という。)が衆議院法務委員会の附帯決議をつけ衆議院を可決成立し,参議院に送付された。

 しかし,本法案には次のような問題点があり,参議院においては修正等がなされることを求める。

 

    * 1 法制審議会は1980年に,「関係当局は,将来,できる限り被勾留者の必要に応じることができるよう,刑事施設の増設及び収容能力の増強に努めて,被勾留者を刑事留置場に収容する例を漸次少なくすること」(漸減条項)という答申を全会一致で採択した。

       しかしながら,本法案は,上記答申と異なり、「都道府県警察に留置施設を設置する」(14条)として,法律で初めて警察留置場の設置根拠を認め,さらに,この警察留置場に本来刑事施設に収容すべき被勾留者を「刑事施設に収容することに代えて,留置施設に留置することができる」(15条1項)ことを認めるに至っている。

       この点に関し,衆議院は上記附帯決議において,「昭和五十五年に法制審議会から『関係当局は、将来、できる限り被勾留者の収容の必要に応じることができるよう、刑事施設の増設及び収容能力の増強に努めて、被拘留者を刑事留置場に収容する例を漸次少なくすること。』との答申がなされたが、現在、刑事収容施設の過剰拘禁問題の解決が、当時に比しても、喫緊の議題となっており、その実現に向けて、関係当局は更なる努力を怠らないこと。」とし,警察留置場漸減の点に触れてはいるが,代用監獄の弊害に言及せずに過剰拘禁問題との関連で述べるにとどまっていて,不十分のそしりを免れない。

       以上のとおり,本法案は,代用監獄廃止,漸減の方向性すら明示しておらず極めて遺憾である。

    * 2 捜査と拘禁の分離は国際人権(自由権)規約(9条)の求めるところであり,国際人権(自由権)規約委員会も,警察内部での分離では不十分とし,代用監獄の廃止を勧告している(1993年,1998年)。

    *  この点に関し,警察庁は1980年,捜査部門と留置部門を分離したと弁明しているが,それ以降でも代用監獄での自白強要,人権侵害事例は後を絶たず,代用監獄の弊害は現在でも解消されていない。これは宮城県内においても例外ではない。例えば,仙台地方裁判所平成13年4月24日判決は、酒に酔っていて事実経過を覚えていない被告人について、誘導のもと自白調書が作成された事案であるが,捜査関係者は被告人が犯行に関与しているとの嫌疑を有しており,自白供述を内容とする上申書が作成されていたが,これは,警部補が鉛筆で下書きしたものについて被告人にボールペンでなぞらせて作成したものであった。判決は,自白を裏付ける客観証拠の欠如,供述の変遷,説明の不自然さ,動機や犯行自体についての迫真性の欠如などを丁寧に認定した上で,自白の信用性を否定したものである。この事件は佐沼警察署での取調中のものであり,全国的にも今なお,代用監獄での人権侵害事例が数多く報告されている。

    *  このような代用監獄の弊害からして,参議院は,1980年に法制審議会において採択された前記答申の歴史的事実をふまえ,「拘置所の収容能力の増強に努めて,代用監獄に収容される例を漸次少なくする」との漸減条項を法案の附則として盛り込むか,または,代用監獄の規定を廃止すべきである。

    * 3 本法案は,「留置施設の規律及び秩序を害する行為」をするときは,面会の相手方が弁護人等の場合であっても職員による面会の一時停止を認めている(219条1項)。しかし、このような規定は刑事施設法案にもなかった規定であり,しかも、弁護人との秘密交通権に対する干渉に当たるものであるから、このような抽象的理由で弁護人との面会が停止されるようなことはあってはならないのである。したがって、当会は弁護人との面会の停止を定める当該条項が修正されることを求める。  

 

    *  以上のとおり,本法案には代用監獄の漸減条項が盛り込まれていないなど,種々問題を有するものであるから,当会は今後とも,代用監獄の漸減,廃止と未決拘禁制度の抜本的改革を求めて引き続き粘り強く運動を続ける決意である。 

 

 

2006(平成18)年5月18日

仙台弁護士会

会 長   氏  家   和  男 

 

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