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平成16年10月21日会長声明

2004年10月21日

教育基本法改正に反対する会長声明

 1 中央教育審議会は、2003年3月20日、「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」と題する答申(以下「本答申」という)を文部科学大臣に対して行った。本答申は、「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指す観点から、今日極めて重要と考えられる教育の理念や原則を明確にするため、教育基本法を改正することが必要である」と結論づけたうえで、教育基本法の前文及び各条文について、「引き続き規定することが適当」なものと「新しく規定することが適当」なものとを挙げ、具体的な改正の方向を示した。

  本答申を受けて、政府は与党内協議を重ねており、本年12月からの通常国会に上程すべく改正法案の作成作業を行っているとのことである。

 

2 現行の教育基本法1条は、個人の尊厳を重んじる憲法の精神に則り、教育の目的を「人格の完成」と明記している。これは、教育が子どもの成長発達権を支援するために行われるべきであるという理念に基づくもので、世界人権宣言や子どもの権利条約にもこれと同様の規定が置かれており、普遍的な教育目的を示すものである。

  さらに、我が国においては特別な歴史的意義を有している。即ち、明治憲法下の教育は、天皇の言葉である教育勅語によって教育の根本的なあり方が定められ、「滅私奉公」、「忠君愛国」の理念が掲げられた。そして、「愛国心」の名の下、国家に役立ち従順に従う人間を育てるための教育が行われた。敗戦後の日本国憲法下の教育基本法は、明治憲法下の教育が戦争の惨禍の一因となったことを反省し、国家の役にたつ人間づくりの教育を排した。

  しかるに、本答申は、「これからの知識社会における国境を越えた大競争の時代に、我が国が世界に伍して競争力を発揮する」ために、「知の世紀をリードする創造性に富んだ多様な人材の育成が不可欠である。」とし、教育の基本目標として「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成」を掲げて、教育基本法の「改正」を提言している。これは、「人格の完成」という教育の本来の目的を、国家の役にたつ人間づくりの教育へと変質させるものである。

 

3 さらに、本答申は、「日本人であることの自覚や、郷土や国を愛する心の涵養」を教育の目的として据え、公教育の場において「愛国心」教育が実施されるべきであるとする。

  しかし、国を愛するか否かを含め、国を愛する心情の内容は、個人の内心の自由に属する問題であり、国が介入し管理・支配してはならない領域である。とりわけ、批判精神が十分に育っていない義務教育段階の子どもに対し、公教育の場で、教師から他の教科課目と並んで、「愛国心」を持つことが日本人として当然であると教えることは、「愛国心」の押し付けとなるおそれが強く、内心の自由を保障する憲法19条に抵触するおそれがある。

  また、公教育における日本人としての「愛国心」の押し付けは、我が国の少数民族や在留外国人の子どもたちに対する精神的な圧迫ともなる。

  近時、広島県、東京都等では、君が代斉唱時に起立しなかった教師が教育委員会によって処分されるという事態が生じており、教師の統制を通じて子どもや保護者に対する君が代斉唱を強制しようとする動きがある。また、2002年には、全国1100万人の小中学生に『心のノート』が配付され、その中には「愛国心」を持つことは日本人として「自然」であるという内容が記載されている。このように、本答申が提起する「愛国心」教育は既に先取りで実施されており、仮に教育基本法に「愛国心」教育が盛り込まれるならば、このような動きは一層強まることが懸念される。

 

4 以上のとおり、本答申の内容は、教育の目的を国に役立つ人材作りに変容させるとともに、内心の自由を侵害するおそれがあり、憲法、子どもの権利条約及び現行教育基本法の根本理念に反する。当会は、教育が「愛国心」の名の下に国家に役立つ従順な人間作りの目的で営まれることに強い危惧を表明し、本答申に基づく教育基本法の「改正」に反対する。

 

 2004年10月21日

  仙 台 弁 護 士 会 

  会 長  鹿  野  哲  義

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