アメリカ及びイスラエルのイランへの先制攻撃及びその後の攻撃の応酬に関し、日本政府に対して国際社会における法の支配の堅持に向けて責任のある役割を果たすよう求める会長声明
アメリカ合衆国とイスラエル国は、2026年2月28日に攻撃機等によりイラン・イスラム共和国各地への攻撃を開始し、イランもイスラエルや米軍駐留地のある中東各国への攻撃、石油輸送の要衝であるホルムズ海峡などで石油タンカー等をミサイル攻撃するといった反撃をしている。これらの攻撃により、イランでは1300人以上が死亡したほか、イランの反撃等により米軍関係者7人、イスラエルで11人が死亡したほか、中東各地でも死者が多数出ている(3月8日時点)。
国際連合憲章は、加盟国に紛争の平和的解決を義務付け(2条3項、33条)、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使は、いかなる国の領土の保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」と定めている(2条4項、武力行使禁止原則)。
アメリカとイスラエルの武力攻撃は、この国連憲章により禁止されている「武力の行使」に当たる。また、武力行使禁止原則の例外として自衛権の行使(同51条)及び安全保障理事会による軍事措置(同42条)が定められているが、イランはアメリカやイスラエル又はそれらの同盟国に武力行使をしていないし、国連安全保障理事会による軍事措置の決議もなされていないため、両国による武力攻撃はこれらの例外には当たらない。これに対して、アメリカとイスラエルは、差し迫った脅威を防ぐための武力攻撃である旨主張しているが、差し迫った脅威を根拠付ける事実は示されていない。また、差し迫った脅威を理由にした先制攻撃が正当化されてしまえば、二度の世界大戦を経験して到達した武力行使禁止原則が無力化してしまうおそれがあるため、アメリカとイスラエルの主張は容認できない。
2月28日にイラン南部の女子小学校が爆撃を受けて児童ら少なくとも175人が死亡しているが、報道によれば爆撃はアメリカ軍によるものであった可能性が高いとのことである(アメリカ政府は否定している)。また、イスラエル軍は3月7日にイランの首都テヘラン等で複数の石油施設を空爆した。子どもや学校、民間人への攻撃は、無差別行為を禁止する国際人道法に反する。
イラン国内の人権状況は、国連でも深刻な問題と受け止められており、速やかに改善されなければならない。しかし、武力行使禁止原則の例外が限定されていることやイランの主権を考慮すれば、イランの人権問題は国連等を通じた外交によって平和的な解決が追求されるべきであり、武力攻撃を正当化する理由にはならないというべきである。
他方、イランによる反撃や中東諸国等への攻撃では民間の施設やタンカー、商船が被害を受けているとの各国政府発表や報道があり、攻撃は軍事目標に限定すべきとする国際人道法に違反している。
ロシアによるウクライナ侵攻(2022年2月)以降、イスラエルによるガザ侵攻(2023年10月)、イスラエル・アメリカによるイラン攻撃(2025年6月)、アメリカによるベネズエラ攻撃(2026年1月)、そして今回のイラン攻撃と国連憲章を始めとする国際法に違反する行為が続いており、戦後積み上げてきた国際社会における法の支配を揺るがす重大な事態となっている。
よって、当会は、日本政府に対して、国際社会における法の支配の確立を推し進める立場から、国際法に違反する武力行使には毅然と対応し、国際社会における法の支配の堅持に向けて責任のある役割を果たすよう求める。
2026年(令和8年)3月12日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 千 葉 晃 平
















