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最低賃金額の更なる引上げを求める会長声明

2024年04月25日

最低賃金額の更なる引上げを求める会長声明

 最低賃金制度とは、最低賃金法に基づいて国が賃金の最低限度の金額を定め、使用者がその金額以上の賃金を支払わなければならないという制度である。最低賃金法1条は「賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与すること」を目的としている。
 最低賃金額について、都道府県毎の地域別最低賃金を労働者数に応じて平均した全国加重平均額で見ると、2003年度(平成15年度)は664円であったところ、2023年度(令和5年度)には1004円になっており、この20年間で300円を超える上昇をしている。特に2021年度(令和3年度)以降の3年間でおよそ100円の増額となっている。また、宮城県の最低賃金額を見ると、2023年度(令和5年度)は923円であるが、2022年度(令和4年度)の883円からすると4.5%の引上率であり、全国加重平均額の引上率4.5%に並ぶ数値となっている。
 しかし、このような最低賃金額の引上げによっても、物価の上昇が著しいため、依然として一般家庭においては、家計が圧迫される状況が続いている。すなわち、2020年(令和2年)基準の消費者物価指数の総合指数は2020年(令和2年)を100とした場合に2023年(令和5年)平均は105.6であり、前年比で見ても3.2%の上昇になっている。これは1982年(昭和57年)以来の上昇率であり、特に食料や家具・家事用品、教養娯楽など、生活に密着した項目での増加の幅が大きかった。(なお、2024年(令和6年)3月における消費者物価指数の総合指数は2020年(令和2年)を100とした場合に107.2であり、前年同月比2.7%であり、以前物価上昇が継続している。)このような物価高騰の前では、昨今の最低賃金額の引上げをもってしても、最低賃金法1条が定める「労働者の生活の安定」が達成されているとはいいがたい。宮城県においても物価の上昇の影響が大きいことを考えれば、「労働者の生活の安定」を図るために物価上昇率に見合った最低賃金の引上げを継続することが不可欠である。
 他方で、最低賃金額の引上げは使用者にとっては負担となる。政府は、生産性向上のための取組を支援する助成金を設けるなど、一定の支援策を打ち出しているが、更なる中小企業に対する支援策の拡充が求められる。
 以上のことから、当会は、中央最低賃金審議会及び宮城県地方最低賃金審議会に対し、継続的な物価上昇に対応する水準の最低賃金額の引上げを行うよう求めるとともに、政府に対し、最低賃金の引上げに対応した中小零細企業支援策の拡充を求めるものである。

2024年(令和6年)4月25日

仙 台 弁 護 士 会

会 長  藤 田 祐 子

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