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地方自治法改正案に反対する会長声明

2024年04月25日

地方自治法改正案に反対する会長声明

1 政府は、2024年3月1日、地方自治法の一部を改正する法律案(以下、「法案」という)を閣議決定し、国会に提出した。
 法案は、第14章として、国と普通地方公共団体との関係等の特例規定を新設し、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、又は発生するおそれがある場合に、各大臣が、閣議決定により、普通地方公共団体に対して、その事務処理について必要な指示をすることができることなどを定めている(改正案第252条の26の3ないし同第252条の26の10)。

2 しかし、法案は以下のような極めて重大な問題を有している。
⑴ 国と地方公共団体との「対等協力」関係が損なわれること
 2000年から施行されたいわゆる地方分権一括法は、地方公共団体を国の下部機関と位置付ける機関委任事務及び国に地方公共団体に対する包括的指揮監督権を認める制度を廃止し、国と地方公共団体は「上下主従」関係ではなく「対等協力」の関係とされた。これは、憲法が「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」(憲法92条)と定めた団体自治の規定を具体化したものである。これに基づき、国の地方公共団体に対する指示権は、法定受託事務については地方自治法で一般的に認められているものの、地方公共団体の自主性を尊重すべき自治事務については「国民の生命、身体又は財産の保護のため緊急に自治事務の的確な処理を確保する必要がある場合等特に必要と認められる場合」に限って個別法で根拠規定を設けることとされた。
 しかし、法案は、個別の根拠規定なしに、一般法たる地方自治法を改正して、自治事務についても国の普通地方公共団体に対する指示権を認めるものであり、国と地方公共団体との関係を「上下主従」関係に変容させ、憲法の規定する地方自治の本旨を損なうものである。
⑵ 指示を行う要件が曖昧であること
 法案は、国が地方公共団体に指示権を発動できるのは、「大規模な災害、感染症のまん延その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生した場合」としているが、漠然とした内容であり、しかも実際に発生した場合だけでなく、「発生するおそれがある場合」も指示権の行使を可能としている。また、「地域の状況その他の当該事態に関する状況を勘案して」などと大臣に広範な裁量を認めている。そして、その対象は自治事務にも及んでおり、地方自治法245条の3第6項の「緊急に自治事務の的確な処理を確保する必要がある場合等」の緊急性要件も外している。これでは、恣意的な大臣の判断と安易な閣議決定を経て、地方公共団体の自治事務に対しても指示がなされるおそれがある。
⑶ 法案が実証的な分析検証に基づいていないこと
 政府は、大規模自然災害やコロナ禍において国と自治体間の調整・連絡が不十分だったことを国の地方公共団体に対する指示権拡大の理由としているが、実証的な分析検証に基づいているとは到底いえない。実際には、現場の実情を正確に認識していない政府の対応が混乱を生じさせた要因となっていることも指摘されている。当会が東日本大震災後被災各自治体に行った調査でも、震災において明らかになった様々な問題のほとんどは、既存の法制度に基づく事前の準備不足が原因であったと判明しており、国の地方公共団体に対する指示権を拡大すればこれを克服できるというものではない。地域の具体的実情を把握している自治体の方が事態に対する的確な対応が可能な場合も多いことを踏まえれば、地方公共団体の自主性を奪うことになる指示権の拡大は、むしろ現場対応の混乱を招くおそれがある。

3 以上の理由から、当会は、法案に反対するものであり、政府に対して法案の撤回を求めるとともに、国会に対し法案を廃案にすることを求める。

2024(令和6)年4月25日

仙 台 弁 護 士 会

会 長  藤 田 祐 子

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