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憲法記念日にあたっての会長談話

2024年05月03日

憲法記念日にあたっての会長談話

 日本国憲法は1947年5月3日に施行され、今年の憲法記念日で78年目を迎えます。
 日本国憲法は、立憲主義に基づいて制定されています。日本国憲法には、全てのひとが個人として尊重されることが明言されています。そしてこの憲法は日本という国の最高法規であり、いかなる法律も国家権力である政府の行為も憲法に違反すると無効になるということ、更に政府の一員として国家の運営を担う人々(内閣総理大臣をはじめとする大臣や国会議員、裁判官等)は憲法を尊重し擁護しなければならないということが定められています。つまり、国家権力が濫用されて個人の権利が侵害されることがないように憲法というものが制定されているのです。これが立憲主義です。
 この憲法が制定される以前の政府は、国民ひとりひとりを尊重してその権利を守るということができず、権力を掌握した軍部の暴走を止めることができず、第二次世界大戦により国内外の人々に言葉に尽くしがたい惨禍をもたらしてしまいました。日本国憲法は、そのことに対する深い反省により制定されたものです。そのため、基本理念として、個人の人権の尊重、国民主権、平和主義の3つを掲げています。これらの理念は、私たち国民ひとりひとりの誰もが、自由を尊重されて権利を守られ、幸福に生きるために不可欠なものなのです。
 個人の人権の尊重とは、性別、年齢、人種、国籍、民族、思想信条、信仰、その他いかなる個人的な特性を理由としても虐げられることはなく、ただひとがひとであるというそれだけで自由に生きる権利を尊重されることを意味します。国民主権とは、国がどのような政治政策を行うかを最終的に決める権限を持っているのは一部の権力者ではなく国民ひとりひとりであるということ、独裁を許さないということを意味します。そして平和主義とは、戦争は最大の人権侵害であるとの見地から、再び戦争の惨禍が起こることがないようこころざすことをいい、それに基づき、日本は、戦争及び武力による威嚇及び武力の行使を永久に放棄し、戦力不保持を宣言しています。
 現在の日本において、立憲主義が遵守され、日本国憲法の3つの理念が実現していれば、私たち国民はみなそれぞれが個人として自由に豊かに平和に生きることができているはずです。しかし、実際には、性的少数者や少数民族や障がい者その他の少数者並びに高齢者及び子どもなどの弱者になりやすい者たちは常に権利を侵害されやすく、今なお解決されなければならない多くの人権問題が存在します。また、多数の国民が反対しているはずの法律が国会において十分な議論や検討を経ないまま強引に制定されてしまったり、多数の国民が反対しているはずの政策が一部の政治家の強い意向で押し通されてしまったりという現実があり、更には集団的自衛権行使の容認や敵基地攻撃能力の保有、武器輸出の解禁などといった平和主義に反する立法や施策が閣議決定により進められてしまっています。
 日本国憲法はいわば人間の理想を謳っているものですが、現在の日本の現実を見れば、残念ながら理想の実現というのはとても難しいものであり、77年経ってもなかなか達成できないのだということがよく分かります。それでも、私たち弁護士は、その日本国憲法の理念を学び、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命として、日本国憲法を最高法規とするこの国の法律分野の実務に携わって仕事をする者たちですから、日本国憲法の掲げる理念の実現を諦めずに目指して、問題の解決を常に志していこうと思うのです。仙台弁護士会は、国家権力が全ての個人を尊重し、また全ての個人が互いの違いを認めて尊重し合い、日本のみならず世界全土でひとりひとりが自由で自分らしく平穏な日常生活を送ることのできる社会がくるよう、弁護士の団体としてできる限りの尽力をしていきたいと思います。

2024年(令和6年)5月3日

仙 台 弁 護 士 会

会 長  藤 田 祐 子

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