死刑執行に強く抗議し、死刑制度を廃止する立法措置を講ずること、死刑制度が廃止されるまでの間、全ての死刑の執行の停止を求める会長声明
本年6月27日、東京拘置所において1名の死刑が執行された。2022年7月26日に1名の死刑が執行されて以来の死刑執行であり、石破内閣になって初めての死刑執行となる。
死刑制度は、罪を犯した人の更生と社会復帰の可能性を完全に奪うものであり、人の生命に関わる極めて重大な人権問題を内包する。
また、死刑は、えん罪であった場合には、本来死刑にしてはならない人の生命を奪うという取り返しのつかない事態を招来させるものである。このことは、免田事件・財田川事件・松山事件・島田事件・袴田事件という5件の死刑えん罪事件において、死刑が確定した後、再審で無罪が確定していることからも明らかである。なお、取り返しがつかない事態を招来させることは、死刑か否かの量刑判断を左右する重要な事実についての事実誤認があった場合も同様である。
このような死刑制度の本質的問題を踏まえれば、死刑制度は早期に廃止すべきであり、当会も、2021年2月27日の定期総会において、「死刑制度の廃止を求める決議」を採択し、政府及び国会に対し、(1)死刑制度を廃止すること、(2)死刑制度が廃止されるまでの間、死刑の執行を停止すること、を求めるとともに、当会としても、死刑制度の廃止の実現に向けた取組みを進める決意を表明したところである。
2024年11月13日に公表された、国会議員、学識経験者、警察・検察出身者、弁護士、経済界、労働界、被害者団体、報道関係者、宗教家及び文化人ら有識者による「日本の死刑制度について考える懇話会」報告書では、委員全員の一致で、「死刑は個人の生命を剥奪する究極の刑罰であり、他の刑罰(自由刑や財産刑)が個人の権利の一部を制限するのとは異なり、人権の基盤にある生命そのものの全否定を内容としている。しかも、人が行う裁判である以上、誤判・えん罪の可能性が常につきまとい、ひとたび誤った裁判に基づく執行が行われるに至れば、取り返しのつかない人権侵害となる」、「現行の日本の死刑制度とその現在の運用の在り方は、放置することの許されない数多くの問題を伴っており、現状のままに存続させてはならない」との基本的な認識の下、「早急に、国会及び内閣の下に死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体を設置すること」、「会議体においては、具体的な結論を出すまでの間、死刑執行を停止する立法をすることの是非、あるいは執行当局者において死刑の執行を事実上差し控えることの是非についても、これを検討課題とすべきである」と提言している。かかる提言にもかかわらず、政府は、死刑が人権問題であることを直視せず、死刑制度の廃止に向けた国民的議論やそのための情報公開を十分に行わないまま、今回の死刑執行に及んでいる。このような死刑制度に対する政府の姿勢は、2022年11月3日に国連自由権規約委員会が日本政府の第7回定期報告の審査を踏まえて発表した総括所見においても批判されており、早急に改めることが求められる。
もとより、犯罪により奪われた命は二度と戻ってこない。そうであるからこそ、犯罪により身内の方を亡くされた遺族の悲痛は計り知れず、悲惨な体験をして複雑・多様な感情を抱いている犯罪被害者・遺族に寄り添い十分な支援を行うことは、死刑制度の是非いかんにかかわらず、社会全体の責務であり、犯罪被害者・遺族への支援の充実・強化を進める必要があることは言うまでもない。
当会は、政府に対して今回の死刑執行に強く抗議し、改めて、政府及び国会に対して、死刑制度を廃止する立法措置を講じること、死刑制度が廃止されるまでの間、全ての死刑の執行を停止することを求める。
2025年(令和7年)8月28日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 千 葉 晃 平