イスラエル軍及び米軍のイラン攻撃に関し、紛争を武力行使によらずに解決することの意義を再確認し、日本政府に対して全世界の人々が平和のうちに生存できるよう働きかけを行うことを求める会長声明
2025年6月13日、イスラエル軍はイラン国内の核関連施設等100か所を超える標的を先制攻撃した。これに対してイランも報復攻撃を行い、その後も両国間で戦闘が続き、6月21日には米軍がイラン核施設を空爆し、6月24日に停戦合意に至った。この戦闘による死者は停戦合意時において、イランでは606人、イスラエルでは24人以上にものぼった。
国連憲章は、加盟国に紛争の平和的解決を義務付け(2条3項)、国際関係における武力による威嚇又は武力の行使を禁止している(同条4項)。この武力行使禁止原則は、国際社会おける戦争違法化の努力の結晶として、第二次世界大戦の悲惨な経験と反省に基づき国連憲章に定められたものであり、その後も友好関係原則宣言等の国際文書で繰り返し確認されている。
今般のイスラエル軍によるイランへの先制攻撃は、武力行使禁止原則に反する。イスラエルは、先制攻撃は武力行使禁止原則の例外である「自衛のための措置」であると主張しているが、イランによる武力攻撃が発生していない段階での攻撃である上、それが差し迫っていたことを証明する客観的な証拠も示されていないため、国連憲章51条に規定された自衛権行使が許容される要件を満たしていないと言わざるを得ない。また、同様に、米軍によるイランへの空爆(6月21日)も、米国による集団的自衛権行使の要件を満たさず、国連憲章第7章下の安全保障理事会決議に基づく集団的安全保障措置(強制措置)でもないため、武力行使禁止原則に反する。さらに、報道によれば、イスラエル軍は、イラン国内の病院を攻撃しているが、これは違法とされない武力紛争においても紛争当事国に遵守が求められ、イスラエルが当事国となっているジュネーブ諸条約中のジュネーブ第1条約19条に反する。他方、イランも、ジュネーブ諸条約の当事国であるにもかかわらず、イスラエル国内の病院を攻撃していることから、これも同条項に反するものである。
このような攻撃の応酬、とりわけ、イスラエル及び米国による違法な武力行使は、紛争の平和的解決を義務付け、武力の行使を禁止するに至った国際社会の長年の努力を踏み躙り、力によって自己の目的を達成しようとしたものと言わざるを得ない。かかる事態は、全世界の国民が平和のうちに生存する権利を有することを確認し、武力によらない紛争の平和的解決を希求する国際的な平和主義(憲法前文、9条)を掲げる日本国憲法の精神からも看過することはできない。
よって、当会は、今般のイスラエル軍及び米軍のイランに対する武力攻撃に関し、二度の世界大戦等の悲惨な経験と反省を踏まえて武力行使が禁止されるに至ったことの意義を改めて確認するとともに、日本政府に対して、国際社会における法の支配の確立を推し進める立場から、各国の違法な武力行使には毅然と対応し、紛争の平和的解決のための外交努力を尽くして、全世界の人々が恐怖と欠乏から免れ平和のうちに生存することができるように国際社会に働きかけていくことを求める。
2025年(令和7年)8月28日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 千 葉 晃 平