2024年10月9日に、いわゆる「袴田事件」について再審無罪判決が確定したのに続き、本年7月18日、名古屋高等裁判所金沢支部(増田啓祐裁判長)は、いわゆる「福井女子中学生殺人事件」において、前川彰司氏に対し再審無罪判決(検察官控訴に対する棄却判決)を言い渡し、同判決は本年8月1日に検察官の上訴権放棄により確定した。
この「福井女子中学生殺人事件」の再審請求手続は、2004年7月に第1次再審請求申立以来、再審開始決定(2011年11月30日)、検察官の異議申立による異議審における再審開始決定の取消(2013年3月6日)、特別抗告審でも異議審の判断を維持、第2次再審請求申立(2022年10月14日)、再審開始決定(2024年10月23日)、検察官の異議申立断念により再審開始決定の確定という経過を辿った。再審開始決定には再審請求審裁判所の積極的な訴訟指揮や証拠開示が決定的に重要な役割を果たしたものの、その一方で、最初の再審開始決定から再審公判が開かれるまで13年以上もの年月を要した。これは、検察官による不服申立てが禁止されていないことの弊害である。
当会では、2023年7月27日開催の臨時総会決議、2024年9月26日会長声明及び本年2月19日開催の定期総会決議においてなされるべき再審法改正の要諦として①再審請求手続における証拠開示の制度化、②再審開始決定に対する検察官による不服申立の禁止、③適正手続を保障する再審請求手続規定の整備を求めてきた。
本年6月18日、上記の3項目に④再審請求審等における裁判官の除斥及び忌避も含む「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」(以下「本法案」という。)が衆議院に提出され、その後、衆議院法務委員会に付託されて、閉会中審査となっている。本法案は、「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」(再審法改正議連)が2024年3月に発足して以来、全国会議員の半数を超える議員の参加を得て、えん罪被害者、最高裁、法務省、日本弁護士連合会等からのヒアリングを実施し、それを踏まえて改正項目や条文案を検討するなど、精力的な活動を重ねた結果により結実したものである。そして、本法案は、当会がこれまで求めてきた再審法改正の内容と軌を一にするものであって、高く評価できる。
一方で、本年4月21日以降、法制審議会刑事法(再審関係)部会(以下「法制審部会」という。)において再審法改正についての審議が行われ、本法案の定める上記4項目も審議対象となっている。
しかし、上記4項目の改正は、改正の必要性・緊急性が高いものであり、改正すべき内容も十分に明確なものであるから、法制審部会における審議の必要性は低いため、速やかに国会において本法案を審議し、成立させるべきである。
再審手続については、上記4項目以外にも、例えば再審開始事由の拡大、再審請求審における国選弁護制度、再審請求審の審理の公開、刑の執行停止(死刑確定者に対する拘置の執行停止を含む。)等、改正されるべき項目は多い。法制審部会においても、上記4項目以外に10項目に及ぶ論点が提示されている。法制審部会においては、上記4項目以外の項目について、えん罪被害者やその支援者、弁護人の意見も聞いた上で、えん罪被害の深刻さや再審事件の審理の実情を踏まえ、えん罪被害者の速やかな救済のための再審制度の構築に向けて迅速かつ真摯な議論が広く行われるべきである。
再審法の構造的な問題点は、これまでのえん罪事件からしても明確であり、何よりもえん罪被害者の迅速な救済のためには、まずは早急に上記4項目の改正をなす必要がある。そのためには、「国の唯一の立法機関」である国会がその責務を果たして本法案を成立させるべきである。
よって、当会は、国会に対し、速やかに本法案の審議を進め、今秋にも予定されている臨時国会において本法案を可決・成立させることを求める。
2025年(令和7年)8月28日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 千 葉 晃 平