労働者派遣法の早期抜本的改正を求める会長声明
昨年末から,経済情勢の悪化を背景にいわゆる「派遣切り」が社会問題化している。厚生労働省によれば,昨年10月から本年6月までの間に失業したか,失業が見込まれる派遣労働者などの非正規労働者は,全国で21万6000人余にものぼるとされている。
こうした現状を踏まえ,当会は,本年1月24日「派遣切り緊急110番」を実施し,当会会館内での電話相談とともに,路上生活者への炊き出しにあわせて公園で面接相談を行った。また,当会は,本年2月21日の定期総会において,「すべての人が,人間らしく働き,生存することができる社会の実現を求める決議」を採択し,国に対し,労働者派遣法について,派遣対象業種を専門的なものに限定し,登録型派遣を禁止するなどの抜本的な改正を行うとともに,正規労働者と非正規労働者との間の同一同等労働に対する労働条件の均等待遇を立法化するなど労働法制全体の改正を行うことを求める見解を表明した。さらに,当会は,上記決議を受けて,本年4月1日から,「生活保護及び非正規労働者の解雇・雇止め等に関する法律相談」を実施している。
ところが,国会に提案されている政府与党の労働者派遣法の改正案は,抜本的な改正にほど遠い内容であり,他方野党からはいまだ対案が示されず,あるべき法改正についての実質的な審議がなされないままとなっている。この未曾有の労働分野の危機に際し,働く貧困層拡大の大きな要因をなす労働者派遣法の抜本的改正への取り組みが進んでいない国の現状は,憂慮すべき事態といわざるを得ない。
働く貧困層をなくし,すべての人が人間らしく働き,生存することができるようにするためには,交渉力をもたない派遣労働者を低賃金・不安定・過酷な労働環境に置き,不要となるやモノのように使い捨てにすることを可能とする労働者派遣法の抜本改正が必要不可欠である。
そこで,当会は,いまだ「派遣切り」の止まない現状に照らし,労働者の雇用と生活を守るべく,改めて,今国会中に,以下のような内容を盛り込んだ労働者派遣法の抜本的改正がなされることを強く求める。
1 職業紹介の実態をもち,労働者を不安定な雇用状態にする「登録型」派遣を禁止すること
2 例外的に許容される派遣対象業種を真に専門性の高いものに限定すること
3 「違法派遣」「偽装請負」への制裁,及び,労働者の地位の安定をはかるために,派遣先に派遣労働者の直接雇用義務を課す「みなし雇用制度」を導入すること
2009(平成21)年6月17日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 我 妻 崇