罹災都市借地借家臨時処理法の被災地への適用見送り方針等についての会長談話
2011年(平成23年)10月1日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 森 山 博
1 政府は,2011年(平成23年)9月30日,東日本大震災の被災地への罹災都市借地借家臨時処理法(以下,「罹災法」という)の適用を見送る方針を決定した。
罹災法は,もともと戦災処理のための臨時法であり,今日の借地借家関係を巡る社会情勢には適合しないとして,従前から,優先借地権,借地権優先譲受権等についての問題点が指摘されていた。また,罹災法が,阪神・淡路大震災(1995年),新潟県中越地震(2004年)に適用された際には,適用地域に実務上混乱をもたらしたとの指摘もなされていた。
かかる問題点等をふまえ,当会は,2011年(平成23年)5月25日,「東日本大震災への罹災都市借地借家臨時処理法の適用に関する意見書」を表明し,政府に対し,東日本大震災の被災地を罹災法の適用地区に指定すべきではないこと及びその意思決定を早急に行うべきであることを求めていた。
今回の政府決定により,今後は,被災地に罹災法が適用されないという前提で,被災地の生活再建・計画的な復興政策に取り組むことが出来ることになったことを,当会としても高く評価したい。
2 当会は,2011年(平成23年)5月25日,あわせて,「権利保全特別措置法第6条の適用に関する意見書」を表明した。
同意見書では,被災地である宮城県全域を,特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(以下,「権利保全特別措置法」という)第6条の適用地区と定めて,民事調停申立の際の申立手数料の納付を要しないとすること及び権利保全特別措置法については,問題点が指摘されている罹災法とは切り離して適用されるべきことを求めていたが,権利保全特別措置法については,既に,2011年(平成23年)6月1日から,被災地を適用地区とする政令が施行されている。
新潟県中越地震の際には,罹災法と権利保全特別措置法とは一括して適用されており,両者を一括して適用する前例となっていたが,今回の政府決定により,両者の取扱いが完全に切り離されることになったことも高く評価できるものである。
3 当会は,今回の政府決定を受け,引き続き被災地の生活再建と復旧・復興に全力で取り組んでいくとともに,今後も被災地の弁護士会として必要な提言や意見表明を行っていく所存である。
以 上