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平成24年4月6日会長声明

2012年04月10日

仙台地裁判決を受けて,改めて自衛隊情報保全隊による国民監視活動の中止を求めるとともに秘密保全法制の法案化に反対する会長声明

 本年3月26日,仙台地裁第2民事部(畑一郎裁判長)は,陸上自衛隊情報保全隊(当時)が自衛隊のイラク派兵に反対する活動等を監視し,市民の個人情報を収集保有していたことについて,原告らが監視活動の差止め及び国家賠償を請求した訴訟において,情報保全隊の上記情報収集活動には人格権の侵害があり違法であると判断した。

 本訴訟では,国は上記監視結果を記した内部文書の存在及びその真偽について認否すら拒否していたが,本判決は真の原本が存在し,かつ,情報保全隊によって作成されたものであることを認定したうえ,情報保全隊が原告らのした活動等の状況等に加え,氏名,職業,所属政党等の思想信条に直結する個人情報を収集して保有したことについて,自己の個人情報をコントロールする権利たる人格権を侵害し,違法であると指摘した。

 この判断は,情報保全隊が密かに前記監視活動を行っていた事実を明確に認定したものであり,国家権力の濫用をチェックし国民の権利・利益を保障するという立憲主義の理念に適うものである。また,高度情報化社会におけるプライバシー権(自己情報コントロール権)の重要性を認めて人格権侵害の違法性を厳しく指摘した点で評価できる。
 しかし,他方で,本判決は,情報保全隊の情報収集活動が国民の集会その他表現活動に対し強い萎縮効果をもたらし,表現の自由を侵害する点について触れておらず,監視活動の問題点を十分に指摘していない。当会は,2007(平成19)年7月18日付け「陸上自衛隊情報保全隊による国民監視活動に抗議しその中止を求める会長声明」においてこれらの問題点を指摘し,監視活動を直ちに中止することを求めたが,改めて情報保全隊による違法な情報収集活動を直ちに中止するよう求める。

 また,現在,政府が国会提出を目指している秘密保全法案が制定されると,今回の如き情報保全隊の国民監視活動に関する情報も「特別秘密」に指定される可能性が高く,そうなってはなお一層国民の人権侵害が隠ぺいされ続けかねない。当会は, 2011(平成23)年12月14日付け「『秘密保全の法制の在り方について(報告書)』に対する意見書」において秘密保全法制の法案化に強く反対する意見を表明したが,今回の仙台地裁判決を受けて,改めてその法案化に強く反対する。

2012(平成24)年4月6日

仙 台 弁 護 士 会
会 長  髙 橋 春 男

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